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特集「意外な代表作」

2018年10月31日

特集「意外な代表作2」⑧ ヒース・レジャー 
悪霊喰(2004年 オカルト映画)

監督 ブライアン・ヘルゲランド

出演 ヒース・レジャー/シャニン・ソサモン

シネマ365日 No.2649

虚実の裂け目 

意外な代表作

 ヒース・レジャーが24歳でした。4年後睡眠薬など薬物の急性中毒で没します。本作に続くのが「ブロークバック・マウンテン」「アイム・ノット・ゼア」「ダークナイト」。ハリウッドの若手ナンバーワンの位置を確固とした矢先でした。「悪霊喰」とは何のことか察しがつきかねますが「罪喰」としたほうがわかりやすい。主人公のアレックスはニューヨークの司祭。カロリング派という、ヴァチカンから異端視される少数派に属しています。彼の師匠であるドミニコ修道士がローマで変死の知らせを受けローマに飛ぶ。遺体の胸には奇妙な印があった。アレックスは原因が「罪喰」に関係あると察します。カトリックでは「告解」は聖職者のみが行える秘蹟で、罪を告白して神の赦しを得るには聖職者に懺悔して神のもとに導いてもらう必要がある。聖職者は神と天国への仲介役なわけ。ところがアレックスの属するカロリング派は、死にゆく本人が神に直接赦しを頼んでもよい、としています。ヴァチカンの本山としては「そういうショートカットはけしからん、聖職者をないがしろにしている」だから排斥する、という事情が背景にあります▼異端視されるアウトサイダーとなると、猫とカツオブシみたいにヒースのキャラと切っても切れません。「ブロークバック…」にせよ「ダークナイト」にせよ、彼は社会から疎外された男で存在を発揮したのです。ヒースは、若くてイケメンでハッピーエンドという、ハリウッドの定番路線を拒否してきた俳優です。本作以後の役作り、役選びを見ていると、アレックスという異端児を演じたことがきっかけのようにも思えるのです。罪喰とは永遠に朽ちることのない者。では肉体のない霊なのかといえば、いいえ。排泄もセックスもするし髭も剃る。イーデンという名で登場する罪喰はミケランジェロの時代から生きてきて、死人の罪ばかり食って疲れ切った、そろそろ引退したい、ついては後継者が必要だから、アレックス君頼む、と言います。アレックスは恋人のマーラ(シャニン・ソサモン)と生きていこうと決心したばかりですから断る。すると…実はイーデンの背後で操る黒幕がいまして、いち早くマーラを殺してしまう。宗教界もマフィアそこのけの世界です▼罪喰は、自殺者のように教会が認めない死者の罪まで食ってしまって解放するという、本来神の仕事を横取りしてしまう、ブラックパワーを以って教会の歯車を狂わせます。パワフルな霊の力と永遠の命を持つなんて、今どきのスーパーマンみたいです。だから枢機卿の中でも野心満々のドリスコル枢機卿はイーデンと組んで教会を操り次期法皇の座を狙っていた。彼が黒幕です。アレックスの友達で数少ないカロリング派の一人トーマスは、罪喰を殺す方法を書いた手引書を手に入れた。羊皮紙はちぎれて半分しかないが、とりあえずナイフを胸の真ん中に突き立てるという殺しの方法だけはわかった。アレックスはイーデンにグサッとやります。ところがトーマスが見つけたもう半分の羊皮紙をつなぎ合わせると「殺し方ではない、罪喰になる方法だった!」今頃いうなよ▼アレックスは意図せず罪喰を後継してしまった。しかしこうなる筋書きはとっくにできていて、ドリスコル枢機卿は、引退したくてやる気のない、イーデンの代わりにアレックスに目をつけドミニコ修道士を殺してローマにおびき寄せたのね。彼の策略はヴァチカンにばれて追放され、アレックスは現代の罪喰として虚実の裂け目に生きることを受け入れる。毒クラワバ皿マデ。それに毒とハサミは使いよう、というし(言いません!)。アレックスは恋人も殺され、幼い時に母親は自殺、天涯孤独です。黒い僧服を着て立つ孤影は、まるでパリコレのモデルみたい。美しき異端者ヒースに一票。というわけで、あまりヒットしませんでしたが、ヒースの「意外な代表作」に数えました。