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特集「ベストコレクション」

2018年11月2日

特集「人形寺に秋たける11月のベストコレクション」② 
テレーズの罪(上)(2012年 文芸映画)

監督 クロード・ミレール

出演 オドレイ・トトゥ/ジル・ルルーシュ

シネマ365日 No.2651

テレーズはなぜ? 

特集「人形寺に秋たける11月のベストコレクション」

 原作はフランソワ・モーリャックの「テレーズ・デスケルウ」。夫の常備薬にヒ素を増量して殺人を試みたテレーズ(オドレイ・トトゥ)がヒロインです。何不自由ないセレブの妻で実家の財産は婚家より裕福、肩身の狭い思いをすることもなく、一人娘も生まれ、人生はバラ色と思われたテレーズが、なにゆえ夫殺害を企てたのか。彼女は偽造したヒ素の処方箋を見破られ医師に告訴される。告訴を取り下げさせようと、八方手を尽くしてテレーズを免訴にする実家と婚家の家族。旧家の対面を保つため、夫ベルナール(ジル・ルルーシュ)はテレーズを別居させ、冠婚葬祭にだけ同道を許す。冒頭の時代は1922年。テレーズはベルナールと婚約中だ。両家が領有する松林を合わせると広大な領地になる。魅力ある財産管理に夢中の夫とともに「私も松林のために結婚する」とテレーズ。財産に対する血は生まれながらのものだと自分でも認める▼夫の妹アンヌとテレーズは義理の姉妹にして親友だ。彼女がパリから来て一夏を過ごす大学生ジャンに恋した。地元の名家に嫁がせる娘だ。ジッドなどの小説を読み、詩を諳んじる無一文の若造とは別れさせねばならぬ、娘が言うことをきくのはテレーズしかいない、話をつけてくれと夫は妻に頼む。夫の実家はテレーズを白眼視しています。正直で誠実な性格だとは認めるが、理屈っぽい、タバコを吸いすぎる、何を考えているかわからない。しかし姑は女同士のカンで、テレーズが他の女と違う、自分たちの家族と相容れぬ人種であることを感知しています。どこが違うのか。ジャンに会いに行ったテレーズは「アンヌは本気だから別れてほしい。どうせあなたは相手にする気はないのだろうし、別れの手紙を書いてここを引き払って」と簡単に告げます。青年は「僕は彼女に人生唯一の情熱を体験させた。アンヌの将来はこの地方の娘たちの定番だ。退屈な田舎に埋もれお堅い生活を送る」その通りだとテレーズは思う。「うちでは心の話はしないの。天気、狩猟、噂話、はぐらかし」「よく我慢できるな、その性格で」テレーズは薄く笑い「アンヌをどうするの? 別れの手紙をやさしく書いてあげて」と頼む▼テレーズは間も無く女児マリーを産み落とす。夫は心臓の痛みを気に病み医師の指導でヒ素を定期的に服用することにした。テレーズは黙ってヒ素の小瓶を見つめた。松林で火事が発生した。テレーズは燃え続ける林の火を見ながら、タバコに火をつけたマッチをポイ捨てし、大事な松林を火事にする自分を妄想した。娘はテレーズよりアンヌになついた。アンヌは細々と姪の世話を焼き子守が少しも苦にならない。夫が消火活動で真っ黒になっているそばで、テレーズは声もかけずクルミを割る。ある時ヒ素を倍量コップに入れて夫に飲ませ何回か続けた。夫は体調を崩した。医師はヒ素を購入する処方箋の筆跡が偽造であることを突き止める。クロード・ミレール監督は、テレーズの殺意や動機を全然説明しません。無表情のテレーズの心に何が隠されているのか、あるいは心がカラッポだから意志も感情も表出できなくなってしまったのか、オドレイ・トトゥもまた、何もつかませません。うまいと思います。