女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ダンディズム-dandyism-」

2018年11月7日

特集「ダンディズム6」① マイケル・シャノン 
テイク・シェルター(2012年 社会派映画)

監督 ジェフ・ニコルズ

出演 マイケル・シャノン/ジェシカ・チャスティン

シネマ365日 No.2656

嵐が来るのだ! 

ダンディズム特集6

ラストで、妻のサマンサ(ジェシカ・チャスティン)が、夫カーティス(マイケル・シャノン)に水平線を覆う黒い雲を見て「わかったわ」と叫ぶ。これが本作の答えですね。カーティスは毎夜のように悪夢にうなされています。途方もない嵐が来る、娘がさらわれる、隣人が襲ってくる、妻が狂う…セラピーにも通い薬も飲み、しますが症状は治まらない。会社の同僚に頼み、トラクターやシャベルなど工事用の大型器具を借り、自宅の庭にシェルターを作ります。娘は耳が不自由で、家族は手話で話す。手術すれば治る、保険も適用できると聞いたサマンサは喜んで夫に報告する。カーティスは喜んだものの上の空。自宅に掘られる巨大な穴を見て、娘の手術費用がいるのに「正気なの!」妻は夫の精神状態が普通でないことに気づきます▼カーティスは施設にいる母親を訪ねた。10歳の時母はスーパーで自分を置き去りにし、他にも育児放棄が重なり施設に収容された。強度のストレスによる幻想と耳鳴りが主たる症状だった。カーティスは母親の妄想が自分にも遺伝しているのではないかと怯える。ますます嵐の強迫観念は抜け去らない。銀行に融資まで取り付け、シェルターはすっかり出来上がった。ところが会社の重機を無断で使用したことでカーティスはクビ。嵐は来ない。パーティや隣人とのおつきあいはますます事態を混乱させる。妻は娘と家を出るが、思い返し戻ってきて夫と冷静に話しあう。今の手持ちで2カ月は持つ、娘の手術を前倒ししてもらい、二人で仕事を探しましょう。いい奥さんね。ご近所の親睦パーティで、元同僚と大喧嘩になったカーティスは、とうとう嵐の到来が近いのだ、安穏となどしておれないのだと大声で言い、緊張のあまり泣き出してしまう。その夜、大風が起こり、サイレンが鳴り響き、本当に嵐が来ます。一家はシェルターに避難し無事に過ごした▼翌日は台風一過、街の木々はたおされ、町中に家財道具が散乱していました。精神科医はカーティスをシェルターから離すように勧め、一家はビーチに旅行する。浜辺で娘と砂遊びをする夫を安堵して見守る妻。その時沖を見ていた娘が手話で教える。「あ・ら・し」。みるみる水平線に広がる黒雲。つまり、妄想とか幻想とかされていたのはカーティスの予知夢で、嵐は現実に到来したのです。チョコッとした台風を見せておいた後に、メガトン級の嵐が来る。妻も夫の言っていたことが本当だと「わかったわ」。結局それだけの話なのですが、マジおかしくなったのでは、と戸惑わせるマイケル・シャノンの演技に文句なしの一票。彼の顔はゴツゴツして顎が張っていかつく、ハンサム系ではありませんが、硬派な男気の役とか、本作のように狂気を醸す内面的な役では天下一品の存在感を見せます。役幅が広く、悪役に回ると間違いなく主役キラー。「マン・オブ・スティール」ではスーパーマンの影が薄くなるゾッド将軍、「シェイプ・オブ・ウォーター」ではヒロインと半魚人をいじめまくる警備責任者、悪役ではありませんが、この人がいるために胸がジ〜ンとしたのは「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」。ジェシカ・チャスティンは珍しく、まともな女性の役に収まっています。マイケル・シャノンはニューヨーク映画批評家オンライン賞主演男優賞、ジェシカ・チャスティンはロサンゼルス映画批評家協会賞助演女優賞など、多くの映画賞で評価されました。