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特集「ダンディズム-dandyism-」

2018年11月9日

特集「ダンディズム6」③ クリント・イーストウッド1 
15時17分、パリ行き(上)(2018年 事実に基づく映画)

監督 クリント・イーストウッド

出演 スペンサー・ストーン/アンソニー・サドラー/アレク・スカラトス/ジュディ・グリア

シネマ365日 No.2658

どう動く 

ダンディズム特集6

パリ行き高速鉄道タリスに乗り合わせ、乱射事件に遭遇した三人の青年が本人役で出演しました。事件に至るまで、青年達のエピソードがつらつら描かれます。一体何を狙ってこの、ヨーロッパ観光ガイドみたいなエピソードを入れるのか、退屈でたまりませんでしたが、彼らがいかに普通の青年であるかを強調したわけね。「アメリカン・スナイパー」にせよ、「ハドソン川の奇跡」にせよ「ヒーロー映画は多いが、実際の社会で偉業を成し遂げた人々の映画は少ない。私はそういう人々を撮るのが好きだ」とクリント・イーストウッド監督は自作について言っています。もしその事件がなかったらごく普通の市井の人だった。でも不意のできごとに遭遇したときに、どう動くかで、人間の生き方のすべてが現れると▼それにしても映画を作る視点というか、ここを切り取れば映画になるとピンときて、いかに作り上げていくか、クリントの一連の「市井の人」ものは皆そうですが、彼の精緻巧妙なリードにやられます。本作も最後にフランス大統領が三人の行動を賞賛するまで、ほとんどの人は、それがどんな「偉業」だったか、深く考えていなかったと思えるのです。本人たちすら(え〜、凄いことやったんだ、俺たち)と、本作を見て初めて事件の全体像が見え、感動したのではないでしょうか。事実の断片をすくい上げ、拡大し深化させる強烈なイマジネーション、クリントの映画力とはつまり、意味付与力です。三人の素人を俳優として起用するのは「うまくいく確信はなかった。何年間もたくさん映画を撮ってきて、今回は大胆に行こうと思った」そうです。63年の経験があるから、今も恐れずに賭けに出られる。「演技は本能的なもので、特別な知識は必要ない。我々がいい雰囲気を作れば、演者は集中できるし奇跡を起こす」とも答えています。クリントの映画の作り方、演技の指導(と言えるかどうかわかりませんが)、ほとんどの場合「あなた任せ」であったように思います。「優れた俳優はクランクインするときすでに役を作り上げている。あとは任せればいい」そして「いい雰囲気」にして演技に集中させる。クリントとは段取り八分、人を乗せるのがうまいのです▼段取り、と書きましたが「ハドソン川」のときは本物のエアバスを一機購入して川に沈め、ロケした。今回も「列車のシーンは本物を使うことを提案した。最高時速は300キロ、250から280キロほどで撮影した。時刻表を変えず撮影したから、列車の停車時間は1分のときもあれば30分のときもあり、それに合わせて機材を出し入れするのが大変だった」。大変だったけれどダイヤに1分の遅れも狂いもなく、やったのですね。俳優が現場に現れて演技するまでに準備万端、整えておく。「演技、スタート」クリントがアクションをかけるときは、俳優は完全に映画の一コマになっています。興味を持ったのはミレニアム時代の青年が、自ら行動を起こしたことだそうです。「主人公はアメリカの青年だ。進んで行動を起こすことのない世代の彼らが動いた。普通の青年が、運命にどう対処するかを描いたんだ」。