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特集「ダンディズム-dandyism-」

2018年11月18日

特集「ダンディズム6」⑫ 栗塚旭3
「燃えよ剣」(下)(1970年 テレビ映画)

監督 河野寿一他

出演 栗塚旭/舟橋元/島田順司/中野誠也/北村英三

シネマ365日 No.2667

新撰組副長土方歳三

特集「ダンディズム6」

 近藤勇(舟橋元)は斬首、沖田総司(島田順司)は病死、井上源三郎(北村英三)、原田左之助は戦死、藤堂平助は近藤たちと別の道を選び、油小路で斬り死。土方歳三(栗塚旭)は、榎本武揚をトップとする函館政府の陸軍奉行として、函館にいた。官軍の総攻撃を明日に控え、土方は北海道まで一人ついてきた副長助勤、斉藤一を江戸に返そうとする。「ここまで一緒に来た私に、なぜそんなことを言うのだ!」頑として動かない斎藤に土方が言う。「近藤さんの墓に伝えてくれ。沖田総司の姉さんに伝えてくれ。源さんの家族に伝えてくれ。新撰組の男たちは立派に戦ったと。それを伝えられるのは君以外いないのだ。俺はいま函館政府の一人だ。しかし新撰組の一人のつもりでいる。新撰組のみんなは、ほとんど死んで、生き残った者も散り散りになってしまった。だが俺がつくった新撰組だ。たとえ最後の一人になっても俺は新撰組のつもりでやる。だいいち、そうしなければ近藤にも総司にも源さんにも合わせる顔がない」土方を見つめる斎藤の頬に涙がとめどなく流れた▼戦火をくぐりボロボロになった「誠」の旗を伝蔵が届けに来た。彼は京都の壬生で、できたばかりの新撰組の日常の世話をした男だ。「この旗のできた頃でした。新撰組とはどんな集団かと聞くと、侍らしく、男らしく生きる人間の集まりだと裏通り先生(医師)が言いました。ほんま、そうでしたな」土方「みんな、よくやったよ。俺は武州三多摩の百姓の倅だ。政治のことなどわかるはずがない。ただ信義を守る一人の男として生きたかっただけだ。動乱の世の中だがその動乱を利用して生きたくはなかった。時代遅れの古い人間だよ」伝蔵は叫ぶように「それでよろしいやおへんか。世の中が変わるたびに変わるお人がぎょうさんいます。そんなん、人間のクズや!」伝蔵の帰路の保証を幹部に指示し土方は目を閉じた。元新撰組隊士たちの幻がよぎる。一人一人に話しかけるが、笑顔を返すだけで声を発しない。「どうした、何か言ってくれ。黙っていないで何か言え」土方は自分の声で目が覚める。部屋に誰もいない。総司が、原田が、藤堂平助が、立っていた床に手を当てる。「あったかい、あったかい。あいつらここにいたんだ。ちきしょう、みんな俺を迎えに来やがった」▼明治2年5月11日未明、土方は単騎出撃した。函館市内を固める官軍が、見慣れぬ仏式軍服の男を見咎め「いずこへ参られる」と訊いた。「参謀府へ行く」「名は何と申される」「名か」。土方はちょっと考えた。「函館政府の陸軍奉行」とはなぜか名乗りたくなかった。「新撰組副長土方歳三」「どういうご用件か。降伏の軍使か」「降伏?」土方は哀れむように微笑し「新撰組副長が参謀府に用があるとすれば、斬り込みにゆくだけよ」馬腹を蹴って射撃隊の頭上を跳んだ。馬が脚を地につけたとき、黒い軍服を血に染めて土方は地上に転がっていた▼土方の生き方をあれこれ考えるより、このようにしか生きられなかった男だと定めたほうが、彼の輪郭がはっきりする。人生は人にいくつのも選択肢を与える。何を選んでどう生きるかは各人に任される。どう生きるか思い悩むがいい。しかるのち、このようにしか生きられないと、自分を唯一無二の存在と思い定めた男や女に、人生は運命を託すのだ。