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特集「偏愛力」

2018年11月21日

特集「偏愛力5」③
ペニー・ドレッドフル3 ナイトメア 血塗られた秘密(上)(2017年 ホラー映画)

製作総指揮 ジョン・ローガン

出演 エヴァ・グリーン/ジョシュ・ハートネット/ティモシー・ダルトン

シネマ365日 No.2670

暗黒の闘い、再び 

偏愛力7

本シリーズの総指揮と脚本に当たったジョン・ローガンが「ナイトメアはシーズン3で終了する」と早い時期に公表したのは正解だった。ローガンにしたらグズグズ続けて中身が薄くなるのはかなわないってとこだったのでしょう。人気があるために長寿番組となったのはいいが、4年、5年と続くうち新鮮さを失い、苦し紛れにレギュラーを死なせてエンドにしたシリーズもあったし。本作で有終の美を飾ろうとした意気込みを買うわ。そのせいかどうか、新メンバーとしてドラキュラ参戦、「ジキルとハイド」のジキル博士登場。悪魔との闘いに苦しむヴァネッサ(エヴァ・グリーン)、狼男のイーサン(ジョシュ・ハートネット)、妻と子を犠牲にした罪の意識から、危険と荒野を求める探検家、マルコム卿(ティモシー・ダルトン)、不老不死の異端児、美しきドリアン・グレイ、ドリアンと禁断の領域に踏み込む人造美女リリー、天才科学者ビクター・フランケンシュタイン博士は愛を求めさまよい、彼が造った人造人間クリーチャーとヴァネッサの意外な結びつきは。おお、迷えるヴァネッサに身を犠牲にして道を示した沼地の魔女ジョニーは、精神科医となって再びヴァネッサのメンターに。レギュラー陣健在です▼それにしてもこの物語は死に満ちています。死と、そして人の心に潜む邪悪なるものとの闘いがバックボーンを貫いている。それを体現するのがヒロイン、ヴァネッサです。ジョン・ローガンは、これはヴァネッサの物語であると明言しています。光と闇、虚無と頽廃、聖性と獣性、裏切りと信頼、罪と償い。人が生きている限り向き合わねばならない対立が姿を変え、形を変え、フーガのように遁走する。果たして主人公たちは闇の闘いに生き残れるのか。彼らはみな精神の危機に直面し、自らのアイデンティティを取り戻すために力の限り闘います。日常の平和を揺すぶられ、家族の愛を奪われ、しかもそれが正義だと思わせる悪と否定の存在がある。私たちが心のどこかで無意識に恐れているもの。ある日それは忽然と正体を現し、耳元でこの世の善なるものは仮面だとささやく。悪とはなんと力強く、美しく、身を滅ぼすに足る甘美な装いで現れることだろう。本作の魅力の一つは詩的であり、叙情的でありながら、暴力的にまでおぞましい映像の力です▼冒頭、エヴァ・グリーンがのけぞるようなズタボロで現れます。思わず人まちがいか。うろたえているうちに、私たちは光を閉ざした汚穢の部屋に引きずり込まれます。ナイトメア「2」で、悪の堕天使ルシファーとその手下の魔女軍団との戦いで、全知全能をふるって彼らを退け、精根尽き果てたヴァネッサは魂の抜け殻となりました。場所はマルコム卿の屋敷。典雅で広大な邸宅は今や荒れ放題。ここでかつて、ヴァネッサを闇の手から守ろうと結束したヴァネッサ・チーム(マルコム卿やフランケンシュタインやイーサンら)とルシファーの死闘が繰り広げられました。死力を尽くした戦いの後、魔女のボスは滅び、ルシファーは闇に退散し、平安を取り戻したチームは、心の傷を抱えながら解散。マルコム卿はアフリカへ、イーサンはアメリカへ、フランケンシュタインはこれまた、自分が作り上げた美女リリーが、ドリアン・グレイに走ったが故に大失恋、愛の思い出を追いヨレヨレになっています▼洗わない食器が山盛りになった流し、埃だらけの家具、開けたことのない窓、ヴァネッサは、けだるげに身を起こし、配達便の牛乳を瓶からガブ飲み、白い液体をしたたらせたまま大きな(かぼちゃほどもある)パンにかぶりつく。百年の恋も冷めるでしょう。ヴァネッサ・チームの一人だった古文書学者ライルが心配して訪ねてきました。彼の穏やかな励ましにヴァネッサは泣き、疲れた体にムチうって掃除を始めます。ピカピカに磨き上げた床、台所の流し、光が滝のように流れ込む窓、ヴァネッサは久しぶりにこざっぱりして、ライルが紹介してくれたスワード医師を訪ねます。部屋に通されたヴァネッサは棒立ち。彼女こそ沼地の切り裂き女、魔女のジェシーにそっくりだったのです。嵐の予感とともに幕は上がります。