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特集「偏愛力」

2018年11月27日

特集「偏愛力5」⑨
ベイツ・モーテル4 サイコキラーの暴走(上)(2015年 サイコ映画)

監督 タッカー・ゲイツ他

出演 ヴェラ・ファーミガ/フレディ・ハイモア

シネマ365日 No.2676

母親の結婚 

20181125偏愛力7

悪人ではないにせよ、関わると面倒を起こす人が世間にはいます。彼もしくは彼女が何らかのトラブルの原因を作る。本作の主人公、ノーマン(フレディ・ハイモア)はその典型だと思えます。発作的に人格が変わるのは病気だから仕方ないと認識して、彼に関わらないのも一つの手立てかもしれません。しかしこれが家族、まして親子となれば「関係ない」ですまない。本作ではノーマンの母親に対する支配欲が次第に強まります。母親が自分を見捨てようとしている、とノーマンが感じとってしまうことが原因です。息子の異常性を苦慮してノーマ(ヴェラ・ファーミガ)は、療養施設に入れようとします。高額である。保険の適用を受けるため、ロメロ保安官とペーパーだけの結婚をノーマは提案し、ノーマに好意的だったロメロは承諾する。偽装結婚とは言いながらノーマはロメロを愛するようになります。精神の不安定な息子を抱え、長男のディランは恋人の肺移植手術に同行し、ポートランドに去った。しっかりした大人の男に頼りたい気持ちになるのは無理ない▼そうとは考えないのがノーマンです。彼はひたすら、母親の愛情(と彼が信じているもの)に執着する。彼女がいないと生きていけない。他の男と結婚なんて許せない。ノーマンと関わった女性たち、初体験の相手で高校の同級生ブラッドリー、高校教師のブレア、エマの母親オードリー。みなノーマンに殺されました。彼女らはなんの罪もない、ただ親密にしていると母親の幻がそばに立ち、自分以外の女性を好きになってはいけないと責める。この症状が進行しノーマンは母親に憑依し、息子を誘惑し、ダメにする憎い女を次々殺していくようになります。殺されたほうはたまったものではありません。本作では息子を施設に入れようとしたこと、偽装にせよ結婚したことで母親は後ろめたさを感じている。ノーマと一心同体のノーマンがわずかな変化を見逃すはずはなく主治医に退院を迫り、ベイツ・モーテルに帰ってきた▼主治医の問診で、ノーマンが父親を殺したのは実はノーマだ、失踪したオードリーも殺したのも母だと、何もかも母親の犯罪であり彼女は異常だと主張するのは、本気でそう思っているかはともかく、母親を孤立させ、それによって母親は自分しか頼るものがなくなる、そんな心理だったと思えます。主治医はいち早くノーマンの多重人格を見抜き、退院は早すぎる、このままだと彼は危険だとノーマに忠告しました。ノーマンは敏感すぎるほど敏感で、帰宅して室内を一瞥するなり「カーテンが新しくなっている。大型テレビがある、西部劇のDVDが。ママはファンだった?」と変化を見てとる。ノーマンは施設で見た地方紙の報道によってロメロとノーマの結婚を知っていました。その記事を突きつけ、なぜ結婚したと難詰します。保険が必要だったと説明するノーマに耳も貸さず保険費用くらい自分がなんとかする、離婚してくれ、彼とはいつも一緒にいて夜も一緒に寝るのだろう…ノーマンは母親とロメロのセックスを、悪夢のように思い描いていました。ロメロは分別ある男としてノーマンに誠実に対応しますが、馬の耳に念仏。逆にロメロを侮辱しせっかくの晩餐の食卓をブチ壊して屋外に飛び出す。追ってきたロメロに、薪割りの斧を片手に向き合う。ノーマンの暴力性があからさまになり、施設に戻したほうがいい、ロメロはそう進言したがノーマは息子を理解していないと拒否する。やはり母は味方でロメロは敵だ…ノーマンの精神状況は、二重にも三重にも彼を取り込み、悲劇に向かって暴走します。