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特集「偏愛力」

2018年11月28日

特集「偏愛力5」⑩
ベイツ・モーテル4 サイコキラーの暴走(下)(2015年 サイコ映画)

監督 タッカー・ゲイツ他

出演 ヴェラ・ファーミガ/フレディ・ハイモア

シネマ365日 No.2677

ノーマの死

20181125偏愛力7

ノーマン(フレディ・ハイモア)と関わったために破滅したのはロメロ保安官です。ノーマンに気兼ねして、彼は夜ソファで寝ています。ノーマは息子が家に戻ってくるまでロメロといると楽しかった。DVDを見たり、食事したり、話が合いやっと心の平安を得た。今は息子が侵入者に思える。執拗なノーマンの嫌がらせに、ノーマは「彼を愛しているわ。彼と一緒に寝るわ。結婚したのだから当然よ」。成人した男と女の結婚、夫婦という社会的な正当性にノーマンの神経は耐えられない。人がみなすアブノーマルこそ彼のノーマリティである▼ロメロにも秘密がありました。本作はスネに傷のある人間ばかりで成り立っています。麻薬製造が主たる収入源であるこの町で、ロメロは麻薬栽培を黙認していた。パリスは会員制クラブの経営者で麻薬取引に関係している。彼の資金洗浄を受け持っている銀行職員の女性レベッカはロメロの元カノ、パリスは保安官選挙でロメロの不支持をちらつかせ麻薬取引の証拠を消そうとするが、逆にロメロに殺され、大金を奪われる。話がごちゃごちゃするので結論を言うと、このレベッカが麻薬捜査で逮捕され、ロメロの関わりをゲロするのです。ノーマはノーマで、息子の施設再入院で意見を異にするロメロと別れる決心をする。ノーマンはノーマンで部屋に開けた小さな覗き穴から(額縁で隠してある)、母親とロメロのセックスを凝視する。ある時は階下で楽しく抱き合うふたりを目撃する。ノーマンの母とふたりだけの独立王国は侵略され汚された。ある夜、ノーマンはストーブに石炭を詰めて燃やし、家中の窓を密閉すると、眠る母の隣に身を横たえた▼勤務からロメロが帰宅すると家の中の様子がおかしい。いくら呼んでもノーマは姿を現さない。不吉な予感。ドアを打ち破って突入したロメロは、ベッドに横たわるノーマとノーマンを見た。ノーマは息絶えノーマンは息をふきかえす。ロメロは逆であってくれたらと思ったでしょう。彼はその後麻薬取締法違反で逮捕されます。ノーマンは母親の葬儀に誰も出席させず、兄に知らせもせず一人で見送ります。その夜、彼は銃をくわえ死のうとした。階下からピアノが聞こえる。降りていった彼が見たのはピアノを弾く、いつも見慣れた母の後ろ姿だった。僕たちは生きていても死んでいても一緒だ、もう離れない。ノーマンは墓に戻り、埋葬した母親の遺体を家に戻す。今度こそ彼は完全に母親と二人だけになったわけです▼ノーマの死によってベイツ・モーテルは荒涼とします。しかしノーマンはどうか。シーズン「5」ファイナルは2017年4月アメリカで終了し、2018年10月から日本でテレビ放映の予定です。見ていないのでなんとも言えませんが、ノーマを失ったノーマンが生きていけるとは思えない。いや現実と違う世界で生きるしかない。狂気のノーマンをヒッチコックは「サイコ」で結晶させました。本作はかなりのハイレベルでヒッチコックとは別のノーマンを扱っています。ノーマンというよりノーマを。「サイコ」でミイラとして終わった母親を蘇らせ骨肉を与えたのは、物語をサスペンスにもホラーにもせず、母子の愛憐に的を絞った製作陣の卓見です。主役の二人は、ヴェラ・ファーミガといい、フレディ・ハイモアといい、充分な力量で難役を成功させたと思えます。ヴェラは本作にプロデューサーとして本格参入。フレディ・ハイモアは映画一家の出身で、ケンブリッジを二学部ダブルファーストで卒業した秀才です。一時は学業を優先し映画は趣味と言っていましたが、卒業後はさあどうでしょう。ともあれファイナルを待ちます。