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特集「偏愛力」

2018年11月29日

特集「偏愛力5」⑪
ヒルサイド・ストリングラー 丘の上の絞殺魔(2004年 劇場未公開、事実に基づく映画)

監督 チャック・パレロ

出演 C・トーマス・ハウエル/アリソン・ラング

シネマ365日 No.2678

殺される女たち 

20181125偏愛力7

アリソン・ラングは従兄弟同士の連続殺人犯ケニス・ビアンキ(C・トーマス・ハウエル)の妻、クレアです。中年男のケニスはデパートの警備員だ。万引きの女性を見つけたら個室に呼び、服を脱がすクズ男である。彼は刑事になりたいのだが、警官採用試験を受けては落ちている。頭を抱えてしょげ返る息子に、母親が「ロスの従兄弟のアンジェロのところで、仕事が見つかるまで置いてもらったらどう」と勧め、息子はその気になる。従兄弟とは20年ぶりの再会。アンジェロは車の内装をしている。居候は2週間の約束が一カ月になり、警官募集に応募するがここでも不採用。コロンビア大学で学位を取った公認セックスセラピスト、ケニス・ビアンキ博士の証書を偽造し、悩みを持つ女性たちのセラピストとなる。口のうまさは天下一品。「君は今までの中で一番綺麗な顔だ」とおだてあげ、もうすぐ開業するとふれこむ▼その一方で、二人は売春斡旋を始める。「CMにでないか」と持ちかけ、女性があやしんで帰ろうとすると本性を表し「このアマ、逃げてみろ、俺はマフィアだ。手足をぶった切るぞ。ここから故郷のアリゾナに電話して、田舎のバカ娘たちにロスに来ればモデルになれるというのだ」。彼らが狙うのはみな娼婦だった。娼婦が殺されても警察は本気で捜査しない。彼らはうそぶく「社会に欺かれた哀れな女たち。悲惨な女。あいつらは社会のゴミだ。殺されて当然だ」彼らの犯罪は娼婦への酷薄な現実をあぶり出します。顧客名簿を300ドルの高値で横流しした娼婦に「騙された」とわかった二人は、本物のマフィアに半殺しにされ復讐を誓うのですが、復讐する相手は自分らを痛めつけたマフィアではなく、バックのない、孤独な娼婦なのです。彼女をレイプして殺し、遺体は素っ裸にして、住宅地の庭先に放り込む。サドと殺人の快楽に味をしめた彼らは一般の女性をも狙い、猟奇殺人は続く。何体もの遺体が同じ場所、丘の中腹から発見されるようになり「丘の上の絞殺魔事件」と呼ばれるようになる。殺害が娼婦だけでなくなり警察はやっと動き出します▼クレアは妊娠したものの男に不審がぬぐえず、故郷アリゾナに帰って出産するという。男は女をどうかき口説いたか。「何があろうと俺は君だけを思っている。実は医者に悪い腫瘍があると言われた。肺ガンだ。クレア、助けてくれ。お願いだ、君と別れたら死ぬ」。勝手に死ね。クレアは幸い実家に逃避するのですが、風采のあがらない、所得はむろん定職さえない男に頼られると、なぜ女性は弱いのか。「巧言令色仁寡なし」は古今の人間洞察です。しっかりした女性ほど、男が弱みを見せることは自分への信頼だと、勘違いしてしまうのかもしれません。彼らは市街地を車で流しながら、目をつけた女性に言葉巧みにいいよる。車に連れ込む。新人モデルの面接だと称し、部屋に誘い入れるときもある。彼らがレイプ、拷問、殺害に至った女性は15人に及んだ▼なんと終身刑なのである。死刑にならなかった理由は、女にも非があったというつもりか。非があったら殺してもいいのか。彼らは雨露しのぐ屋内に住み、三度三度食事して、病気になれば手当を受けるのだ。女たちこそ殺され損である。一人は心臓疾患で刑期中に死んだ。チャック・パレロ監督には本作以外に「エド・ゲイン」「ヘンリーもう一つの連続殺人鬼の記録」がある。本作だけで胸が悪くなったのでこれ以上もういい。