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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月2日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー②
エリザベート1/プリンセス・シシー(1959年 伝記映画)

監督 エルンスト・マリシュカ

出演 ロミー・シュナイダー/カールハインツ・ベーム

シネマ365日 No.2681

美しく青きドナウ 

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー

 ヨーロッパ近代史で人気を二分する王妃といえば、フランス王妃、マリー・アントワネットとオーストリア・ハンガリー帝国の皇后、エリザベートと思われます。17歳だったロミー・シュナイダーが、16歳で嫁いだエリザベート(愛称シシー)を演じて国民的人気を得た決定作。劇中じつに愛らしく、わがままで、怖いものなしの娘を、ロミーがハツラツと演じています。姉が結婚するはずだったフランツ・ヨーゼフ(カールハインツ・ベーム)がシシーに一目惚れ、1854年4月24日、二人は挙式し、シシーの人生は大きく旋回しました。本作は三部作の第一作です。ほぼデビュー作とも言える本作だけにしようと思ったのですが、エリザベートのスケールが大きく、決して幸福とは言えなかった波乱万丈の生き方を思うと、ロミー・シュナイダーの実人生とダブリ、ついつい、エリザベートの後を追いました▼シシーはバイエルン王国の名門、ヴィッテルスバッハ公爵家の娘。父公爵は窮屈な宮廷を嫌い、森と丘の大自然の中でのびのび家族と暮らしていた。シシーはこの父が大好きでした。父の手ほどきで、暴れ馬さえ難なく乗りこなす乗馬の名手となり、父はそんな娘が可愛くて仕方ない。つまりシシーはお妃教育をすっ飛ばして皇帝の嫁となったのです。そこにはウィーン宮廷を牛耳っていた「ハプスグルク家唯一の男」と異名をとる、ゾフィー太后妃が待っていた。「ドイツ語以外に何を?」「英語とフランス語を」「ボヘミア語、ハンガリー語、クロアチア語を習得しなさい」鶴の一声だ。ゾフィーは無能の夫を退位させ、息子を皇帝に就かせたゴッドマザーである。彼女は田舎娘丸出しのシシーを気にいっておらず、勉強好きで挙措すべてに優雅だった姉を望んだが「こればかりは私の意見を優先させてもらいます」と、フランツが後に引かなかった。自分が貰う嫁ではなし、仕方なかった。「歯が黄色い」「ウィーンの作法を知らない」とズケズケ指摘し、嫁姑の間には早くも天敵同士の火花が散った。シシーは結婚式が近づくにつれ憂鬱になり、母親が案ずると「ゾフィー叔母様(シシーと王妃は姪と叔母の関係)と、宮廷の儀式を恐れているの」と打ち明けている▼しかしなんといっても16歳である。フランツは若くてハンサムでやさしく、莫大な財産家だ。未来に向かって微笑もう。エリザベートは美貌のうえ、資料によれば172センチ、ウェスト51センチ、50キロという、現在のモデル並みスタイルの持ち主で、中年以後も体型を維持するため厳しくダイエットした。スポーツに熱心で特に乗馬は欠かさなかった。夫の愛を支えに、ヨーロッパ最強の姑の叱責と重圧に耐え、後継男子を産んだ後は義務から解放されたかのごとく、宮廷を後に各国に旅に出る。皇帝は、妃であり嫁である妻の立場を思いやり、やかましいことを言わず長い不在を認めた。エリザベートの宮廷からの逃走とも言える後半生を思うと、本作の彼女はまばゆいほどだ。ロミーは輝くようだし、実にしっかりと、堂々と演じている。母ルドヴィカを演じたのはマグダ・シュナイダー、つまりロミーの実の母だ。4月20日、エリザベートはきらびやかに帆を張った輿入れの船で、従臣とともにドナウを下った。沿岸にはお転婆で人なつこく、家畜を世話し動物好きだった公爵家の令嬢を見送る人々が別れを惜しんだ。船影を認めた陪臣が若き皇帝に伝送する。「バイエルンのエリザベート姫、ご到着」…美しく青きドナウに映る未来の皇后の運命を誰が知ろう。