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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月3日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー③
エリザベート2/若き皇后(上)(1959年 伝記映画)

監督 エルンスト・マリシュカ

出演 ロミー・シュナイダー/カールハインツ・ベーム

シネマ365日 No.2682

カリスマ 

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー

 本作の中心はウィーンの宮廷入りした皇后エリザベートと姑ゾフィー太后妃との確執です。王女を産んだエリザベートは目に入れても痛くないくらい可愛がるが、ゾフィーはあっさり子供を取り上げてしまう。あなたには皇后としての任務がある、子育ての時間はない、というのが理由。ゾフィーとは謀略渦巻く宮廷を仕切ってきた「ハプスブルク家唯一の男」。彼女から見れば「シシーがまだ子供なのに養育は任せられません」。シシーは夫、皇帝フランツにねじ込むが皇帝もどこかで母親の言うことが正しいと思っている。シシーは「旅に出ます」いいおいて実家に帰ってしまう。はたで見ている分には、シシーの行動は無邪気で一途で、若い母親の気持ちをよく表していますが、ゾフィーにすると職場放棄です。家出しようと息子が取りなそうと鉄板ゾフィーはビクともしない▼嫁が気に入らないのはハンガリーの反逆者たちを皇帝は恩赦にしたことだ。息子を暗殺しようとした連中を許すなんてとんでもない。しかるにシシーはハンガリー贔屓だった。子供の頃家庭教師からヨーロッパの広大さ、多様さを教えられ目が開いた。だから勉強嫌いではあったが、ハンガリー語は速やかに習熟した。恩赦は嫁の入れ知恵だと踏んだゾフィーは、孫にまで危険な思想を吹き込まれてはかなわぬ。ハンガリー代表団がウィーンを表敬訪問した。代表者はアンドラーシ伯爵。のちハンガリー王国の初代首相になる切れ者です。会おうとしない皇帝を飛び越え、伯爵は強引に皇后の居室を訪問する。「恩赦を受けすぐウィーンに参りました。ハンガリー人は皇后に感謝しています。ハンガリー人に光を与えてくれたのは恩赦ではなく、皇后の愛情です」。シシーは恩赦を受けた使節団を舞踏会に招待する。苦虫を噛み潰したようなゾフィー。やがてシシーは懐妊する▼意地が強いのはシシーもゾフィーも、どっちもどっちだ。子供を返さないなら宮廷を出るとシシー。勝手にしろとゾフィー。ロシアと戦争になるかフランスとの関係も緊迫している事態に妻が出て行くなんて、皇帝は気が気ではない。アンドラーシ伯爵は「ハンガリー人はマリア・テレジアの時代から信頼できる皇族との出会いを待ち望んできた。やっとあなたのような方に会えた。あなたにハンガリー王妃になっていただきたい。ぜひ我々使節団の接見の場にいらしてください」。懇望するが宮廷を出ると決めたシシーは「できません」と断る。ゾフィーも使節団に会わない。侮辱だと受け止めた伯爵は憤怒の面持ちで退出。皇帝は嫁と姑の間で進退きわまる。しょぼくれて一人接見に出ようと衣服を整えたとき、長い廊下の向こうに皇后の正装で威儀を正したシシーが現れた。皇帝は胸をなでおろし、伯爵は皇后への忠誠を誓った▼誰にでもアキレス腱はある。本作ではゾフィーのそれは妹、つまりシシーの母である。嫁姑の不穏な噂に胸を痛めた母は姉を訪問する。「姉上のやさしさを私は子供の頃から知っています。あなたの厳しさは任務のため。表向きだけで心の中は違う」。周囲から絶対視されいつも身を鎧ってきたゾフィーは、人から褒められたことなどない。褒めるなど恐れ多い、と周囲は決めてしまったこともある。それに「ふん、あの連中の褒め言葉など」てんから信用しなかった。もし妹が「姉さんはしっかり者で賢い」などと言ったら「当たり前よ」だったが、「やさしい」と言ってくれたので「よくぞおわかり」ニンマリした。子供はたちまちシシーの手元に戻るのである。もちろん子育ては一任だ▼ハンガリー王国の王と王妃に就任する祝賀式典で、シシーは「私は王妃として任務を果たすことを誓います。私を王妃にしてくれたハンガリーの民の幸せのために、すべてに全力を尽くすと約束します」これをハンガリー語で言った。満場のハンガリー人は熱狂した。宮廷である日のこと「皇后は乗馬? やはりね、馬のほうが大切なのね」とゾフィーはぼやいたが、人の心をつかむカリスマは認めた。皇后としての役目は放棄したのも同様のシシーの後半生だったが、ハンガリー統治には非常な関心と情熱を傾けた。近隣の大国に翻弄され、分割・被支配と様々な苦難の歴史をたどったハンガリーが、平和な独立国家となった礎を築いた人物として、シシーは今も慕われている。