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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月4日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー④
エリザベート2/若き皇后(下)(1959年 伝記映画)

監督 エルンスト・マリシュカ

出演 ロミー・シュナイダー/カールハインツ・ベーム

シネマ365日 No.2683

決定作

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー

 ロミー・シュナイダーは「シシー2」(本作のこと)には出たくなかったと書いている。彼女が書き残した文章は13歳の日記に始まり、折々に触れて書き継がれ、後年レナーテ・ザイテルが『ロミー・シュナイダー恋ひとすじに』で編纂した。ロミーはわずか18歳で8本の映画に主演し、これから女優の本道に入ろうとしていた。祖母、両親とも映画人の家に生まれ育ち、映画業界に甘い夢を持てず、成功作の続編は撮らないと早くから決めていたが、「シシー」1・2とも大ヒットとなり、映画会社は放っておかなかった。しぶしぶ承諾したものの、「私はどうも時代物のラブストーリー女優というイメージに固定されているようだ。シシー以来くる話といえば、一番古いものは800年前にさかのぼる古臭いセンチメンタルな恋物語なのである」と自己分析している▼そこで彼女はしっかり、女優としての将来計画を立てた。「毎年一本は大ヒットを狙う映画に出る、というのは配給会社の信頼を保ち、映画館主たちにも私の映画は儲かると思わせるためだ。それから何か楽しい映画にも出演したい。現代もののミュージカルとかコメディとか、生き生きして元気の出るものがいい。三本目としてはホルスト・ブーフホルツの『不良たち』のような硬派なリアリズム作品に出たい。その間に演技の勉強もする。2年後には舞台にも立ちたい。まだ決めかねているのは外国(ハリウッド)からの映画の話にどう応じるかだ」。18歳とは思えないほど堅実で大人びている。というのも「私はたった3年間しかこの世界にいないのに、落ち目になった俳優さんたちを見てきた。そうなっては元も子もない。かつては大スターだったのに、ちょっとした隙に消えてしまった人なんて無数にいる。(略)私が自分で苦労しつつやってきた過去の3年間にも、映画においては弱いーあるいは、言い換えるなら不安定な性格の持ち主が一番困るのだということを実際に見てきた。ママは強くはっきりした性格の持ち主だ。この世界のあらゆる落とし穴を知り尽くしている。それで彼女は、決して愉快なものではない撮影所のゴシップなどに私が巻き込まれないように注意を払ってくれた」▼映画界で生き延びる、原則のようなものを体得しようとしています。映画館主にも儲けさせなければ、なんてシビアでバランスのとれた感覚ですね。人気や美貌だけでは生き残れない、ちょっと気を許したために転落した「大スター」が何人もいた。誰のせいでもない、自分のせいだ…女優とは体一つで勝負するのですから誰に代わってもらうわけにもいきません。作品を選ぶこと、監督を選ぶこと、脚本を選ぶこと、選んだ限りは役に全力を投入すること。以後、ロミーの努力は絶望的なまでに燃焼します。「私はもう子供でも小娘でもないのである。私が映画で要求される仕事は、他の大人の俳優たちのやるべきことと何ら変わるものではない。そこでは朝から夜中まで待機していて、自分の出るカットをきちんと取り終えることだけが要求される」▼これと同じことをジョディ・フォスターが書いていました。「私が映画界で長年やってこられたのは、定められた日の定められた時刻、定められた場所に、セリフを完全に覚えて立っていたからだ」。大物ほどさりげなく実務的ですね。エリザベートという伝説のカリスマ皇后を演じたことは、決して小さく語るべき経験ではありませんでした。彼女はこの映画のおかげで、イメージが固定し、脱却するのに苦労したというふうに言われましたが、「シシー」は「1」「2」どころか「3」まで作られるのです。イメージが固定する女優ならとっくに映画界から消えていたでしょう。ロミーから言わせるとケチョンケチョンだったシシー体験は、26年後ルキノ・ヴィスコンティ自らのメガホンによる「ルートヴィヒ」で、「映画史上最高のエリザベート」となって結実します。それを思いあわせると、本作のシシーこそ女優ロミー・シュナイダーを世に送り出した決定作と言えます。