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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月5日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー⑤
エリザベート3/運命の歳月(1957年 事実に基づく映画)

監督 エルンスト・マリシュカ

出演 ロミー・シュナイダー/カールハインツ・ベーム

シネマ365日 No.2684

聞いたこともないフランス男 

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー

エリザベート「3」は「2」の引き伸ばしみたいになって、目新たしい構成ではありません。ロミー・シュナイダーは渋々「2」を引き受け、絶対に「3」は嫌だと固辞していたが周囲に押し切られた。「シシー」シリーズはドル箱となっていたから、まだいける、と関係者は見込んでいました。そこで三作目。筋書きの中心はエリザベート皇后(ロミー・シュナイダー)の結核の発病と療養、回復直後に続くイタリア訪問です。オーストリアと反目していたイタリアは皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(カール=ハインツ・ベーム)と皇后の訪問を敵意むき出しで迎える▼皇帝と皇后はベタベタの夫婦愛で描かれます。当時結核といえば回復の見込めない死の病だった。おそらくこの冬は越せないでしょうと侍従位はいう。クールなゾフィー太后妃は息子(皇帝フランツ)に「あとの皇后を探さないと。皇后は健康でなければなりません。世嗣も産まなければ」「世嗣など。皇后が死んだら私も生きていない」。ゾフィーはピシャリ「皇帝の言葉とは思えません」。こんな強い母親の元では、皇帝もやりにくかったでしょうね。風光明媚なコルフ島(地中海東部、イオニア海にあるギリシャの島)に転地療養しました。そこへ娘の危機と駆けつけたのが実母ルドヴィカ。この人もキビシイ。「あなたは寝てばかり。世間の女性は病気の時でも寝ておれないのです。起きて歩きなさい。体を動かすと病気は治ります」ピシピシといいつけ、自分も一緒になって歩け、歩け。海を見下ろす一等地で、なんの気兼ねもいらない母親が看病してくれるのだから百人力だ。若いシシーは侍従位が驚嘆するほど体力を取り戻し、めでたく首都ウィーンに帰還します。そこで持ち上がったのがイタリア訪問でした▼ミラノのスカラ座で行われた歓迎演奏会では、ドイツ国歌が始まるとすぐ、ヴェルディの歌曲にとって代わる。「侮辱だ」憤りを隠せない皇帝を制し、最後まで謹聴した皇后は誰よりも先に拍手で讃える。歓迎レセプションに招待された貴族は、代理出席として、礼の仕方も知らぬ馬丁、召使、女中たちにそれなりの衣装を着せ出席させた。会場はまるで仮装大会だった。視察の言葉も言えない「貴族」に、皇后は「会えて嬉しい」とひとりずつ手を握る。ひとりだけて本物の貴族が視察役で出席していた。彼は「皇后は美しく、丁寧に貴族をもてなされた」。「貴族だ? 彼らは召使だ。あれが貴族だと他国で言われたら、イタリアの貴族は馬鹿にされる!」▼ヴェネツィアでは運河の両脇の家々の窓は閉ざされ、掲げられたのはイタリア国旗のみ。歓迎の市民は帽子も取らずソッポを向いていた。大聖堂までの長いレッド・カーペットを皇帝と皇后はまるで道行きのように寂しく歩く。小さな点が遠くに現れた。ルドヴィカに手を引かれた愛娘ギーゼラがそこにいた。「君を驚かせようと、呼んでおいたのだ」と皇帝が耳打ちした。長い間離れていた母娘だった。エリザベスはわき目も振らず走り出す。娘を抱きしめ滂沱の涙。母娘の対面に見たエリザベスの心情に市民は軟化する。ドイツ国旗が翻り「皇后万歳」を唱える。なんとまあ調子のいい映画だ▼ただし、本作でロミーがスクリーンに初めて姿を見せるシーン。彼女はベッドにいます。光を吸い込むような微笑を浮かべる。演じた時19歳だったとは思えない女の成熟をそなえています。ロミーを知らなくても、フツーの女優とはちょっと違うな、という明らかな差異感を感じさせるでしょう。「自分とシシーは似ても似つかぬ人間だった」と彼女が語る通り、ロミーとは、その後の出演作の役を見ても、複雑な陰影の濃い女性でした。あまりに単純な作品の連続に嫌気がさしていた彼女に、かつて母親マグダ・シュナイダーの当たり役だった「恋ひとすじに」が持ち込まれました。共演は聞いたこともない、アラン・ドロンというフランス男でした。