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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月10日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー⑩
ルートヴィヒ(上)(1980年 事実に基づく映画)

監督 ルキノ・ヴィスコンティ

出演 ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/ヘルムート・グリーム

シネマ365日 No.2689

二人のアウトサイダー 

DiVA特集17 ロミー・シュナイダ

 「ルートヴィヒ」の撮影は1972年1月、オーストリアのバート・インシュルで始まりました。極寒の撮影に臨む前、ロミーは4時間もメークにかけ、高価な衣装に身を包んだ。この映画はバイエルンの国王ルートヴィヒ2世の伝記です。当時の最高位にある登場人物たちとその日常、環境をルキノ・ヴィスコンティは一点一画おろそかにせず、ため息の出るような豪華さで再現しました。まず19歳の若き国王の戴冠式がそれ。美貌を歌われたルートヴィッヒが、目の覚めるようなブルーの軍服に身を包んで王冠をいただく。告解する彼に神父が「救済に至る道はいっそう険しくなろう。謙虚でありなさい。身近な人の忠告に耳を傾け従いなさい。真に偉大な者は控えめで慎ましく栄誉に惑わされない」「神父様。私は力の使い方がわかりました。私には容易に思えます。賢者や偉大な芸術家を集め、王国の名を高めます」幻想と希望に満ちたその日、若き王子は王権を手にする。しかし41歳で退位と死を迎えるまで、現実は彼を裏切り続けた、もしくは彼は王たる現実を裏切り続けた▼オーストリア皇后エリザベート(ロミー・シュナイダー)は、ロミーが最も得意とするキャラでした。失意にあっても強い女、官能的で魅惑的な女、自立していて男などなくてもやっていける女。つまりエリザベートは儀礼と束縛の絡みつく宮廷の異端児であり、彼女が心の通い合う相手は、もう一人の異端児、ルートヴィヒだった。エリザベートは芸術家になればふさわしい才能を発揮したであろう、この従弟が「国民を豊かにする」理想に燃え、ワーグナーという浪費家の詐欺師に等しい男の才能を買うあまり、やれ歌劇の上演だ、劇場の建設だと、国庫の負担を顧みない愚挙に頭を抱える。エリザベートは5年半ぶりにインシュルで、国王就任を祝うためルートヴィヒと再会します▼初めてロミーが登場するシーンです。彼女は広い厩舎で馬を輪乗りしている。仄暗い石油ランプに黒い乗馬服と黒のシルクハット。鞭を手に白馬にまたがるロミーは極寒に咲く花のごとく、凍りついたように美しい。厩舎の暗がりからルートヴィヒが凝視する。エリザベートは彼がただ一人愛することのできる女性。ルートヴィヒの公私を含めて生涯を貫通するのは叶えられない愛への渇望でした。戦争が嫌い、政略が嫌い、美しいものへの希求、愛した男たちへの惑溺、閣僚から異端視され疎外され、死ぬまで理解されなかった彼の国事マネジメント。政治的な力量は危惧せねばならぬ従弟であることがエリザベートはわかっている。彼はしかし男だ。自分のように宮廷を夫に丸投げして逃避によって身を守ることはできない。石油ランプに照らされ全身を現したルートヴィヒに、幼い頃のままエリザベートは話しかける。こんな調子で何でも話せる「家族」が自分にはいなかった。ルートヴィヒだけには、アウトサイダー同士だけの気脈が通い合うのです。馬を操りながら言う「皇后の未来に自信が持てないの。曲馬師になろうかしら」「今夜の晩餐はすっぽかされるとか。それでここまでお会いしに来たのです」「変わったわね。前よりハンサムだわ。欧州一の美しい王子ね」エリザベートはルートヴィヒを伴い夜の遠乗りに出る。雪白く、青い月夜に影を落とす林の梢。続くシーンはヴィスコンティの、凝縮した冷たい甘美を余すところなく映し出します。