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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月11日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー⑪
ルートヴィヒ(中)(1980年 事実に基づく映画)

監督 ルキノ・ヴィスコンティ

出演 ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/ヘルムート・グリーム

シネマ365日 No.2690

「いいわ。子供ね」

DiVA特集17 ロミー・シュナイダ

 ルートヴィヒにはロシア皇帝の娘と縁談が持ち上がっていた。「あなたの噂は本当? まだ女を知らないという。孤独が好きで他人を軽蔑し、夜馬に乗るそうね。月光の恋人ですって? 彼女は結婚したらダメよ。皇帝の娘は」エリザベートは断言する。尻に敷かれるのは目に見えている。いや敷かれてもいいが、変人と呼ばれるのは純粋すぎるからであり、繊細で気のやさしい従弟を傷つけて欲しくない。「承知しました。仰せに従います」「あなたは美男だけど賢くないわ」「あなたが必要です」「そうかしら。明日発つのね。三日後雪がやめば満月よ。遠乗りできるわ。一緒にどう? ミュンヘンの用ってなんなの?」▼ワグナーがいかに偉大な音楽家か力を込めるルートヴィヒに「バイエルンを音楽の国にしたいの?」「私は真剣なのです。ワグナーのおかげで世界に貢献できる。約束してください。私を見捨てないと」「いいわ。子供ね。それに少しヘンだわ。うちの家系は皆そうだけど」「私を一人にしないでください」。自分への情熱を含め、エリザベートは彼を一人で放っておけないと確信する。内輪だけの晩餐会にルートヴィヒを招待する。その前に妹のゾフィーとの婚約を画策する。エリザベートの手配で王族一族が勢ぞろいした席にルートヴィヒが到着した。温室にしか咲かない希少な花をエリザベートに持ってきた。彼女は簡単な礼を言い、すぐそれをゾフィーに手渡す。ルートヴィヒはみるみる機嫌が悪くなり「ミュンヘンに用があるので失礼します」。王族一家を無視し、くるりと背を向ける。しくじったか…エリザベートは階段から「ルートヴィヒ!」キッと振り返り「約束されなくとも待っています。場所はローゼン・インゼル(バラの島)です」中学生でもこんな純情なデートの申し込みをするだろうか。仕方ない。エリザベートは島に来た。ルートヴィヒは小走りで迎える。ワグナーの公演の成功を喜々として報告する。「いくら使ったの、税金は。ワグナーやその家族、指揮者とその家族に」「なぜそんなことを。あなたまで批判を気にするのですか」「正しい批判ならね。感傷的な友情は創造への幻想を生むだけよ。私への愛と同じように。かなわぬ恋を心に抱いて自分を正当化しているのよ。結婚なさい。ゾフィーと」「あなたしか愛せません」「愛は義務なの。現実に立ち向かいなさい。君主は歴史とは無縁、ただの見世物よ。暗殺でもされない限りすぐ忘れられる」。ルートヴィヒは告解での誓いを思いださねばならなかった。「身近な人の忠告に耳を傾け、従え。真に強い者は謙虚でなければならぬ」という。ワグナーとは、劇中で見る限りルートヴィヒから甘い汁を吸うだけのヒモ男だった。「愛とか友情とか、愚かな若造だ。変人の家系の末裔さ」影でそういうワグナーを、ルートヴィヒは「音楽家にならなければ聖人になっていた」とまでのぼせるのである。エリザベートの炯眼を信じるべきだった。しかしエリザベートに拒否された愛の行方は迷走する。精神的に彼を打ちのめし、国政も戦争も人任せ、城の造営に逃避して国庫を疲弊させる、最悪の事態になだれ込む。