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特集「ディーバ(大女優)」

2018年12月13日

特集「ディーバ17」ロミー・シュナイダー⑬
サン・スーシの女(上)(1984年 ヒューマン映画)

監督 ジャック・ルーフィオ

出演 ロミー・シュナイダー/ミシェル・ピコリ/ヘルムート・グリーム/マチュー・カリエール

シネマ365日 No.2692

踏みにじられた運命 

DiVA特集17 ロミー・シュナイダ

 時代は1930年代ベルリン。オープニングに流れる哀切な「亡命の歌」。サン・スーシとはパリへの亡命者が集まるレストランで、この店の前でヒロイン、エルザ(ロミー・シュナイダー)と夫ミシェル(ヘルムート・グリーム)は、当時パリのドイツ大使館書記官レガート(マチュー・カリエール)に射殺されます。物語は現代、世界人権保護委員会の代表マックスは、パラグアイで勾留中の女性の解放要求のためにパラグアイ大使館を訪問、面談した大使がレガートであることを確認して発砲、殺害します。そして裁判。マックスの回想によって映画は進みます。本作の公開は1982年4月、5月29日にロミーは他界しましたから文字通り遺作となりました▼ナチス政権下のベルリン。父親をナチスに殺された少年マックスは、父親の友人ヴィナー夫妻、エルザとミシェルの養子として引き取られます。情勢が厳しくなり、反体制の新聞を発行していたミシェルは先に妻子をパリに逃がす。新聞社の売却が済んだら後から行くと約束していましたが途中で逮捕。彼は大金を列車にいたフランス人モーリスに預けました。モーリスは篤実な人物で、探しあてたホテルでエリザに会った。彼女は歌手としてナイトクラブで歌っていた。通ってくる男の一人がレガートでした。パリの孤独の中でエリザは酒に溺れ、夫を助けることのできる唯一の男、レガートと一夜を共にします。夫は釈放された。夫婦の喜びは束の間、レストラン、サン・スーシに入ろうとした直前、レガートは部下に二人を射殺させるのです。本作は反戦映画でもあります。幸福に暮らしていた家族が引き裂かれ、別人のように衰えて帰ってきた夫、夫は誰が釈放してくれたのかとタクシーの中で妻に聞く。「私よ」とエルザが答える。夫は何があったのか察した。でもそれが何になる。今は生き延びる時だ。それも許されなかった。映画のトーンは暗く抑圧的で、戦争中の背景は具体的に述べられません。しかしわずか数分の出演で、失われた過去と行きずりのフランス男との情事に、やるせない、未来のない女を演じた名優マリア・シェル(「居酒屋」「縛り首の木」)冷酷に女を棄て保身のために口を封じるマチュー・カリエール(「ビリティス」「エゴン・シーレ/愛欲と陶酔の日々」)、また偶然列車で出会ったためにエリザと知り合い、彼女に恋する篤実なフランス男モーリスにジェラール・クライン、エリザの友達であり、収容所から解放されたあと、娼婦として生きてきた女シャルロットが、エルザ夫妻の悲劇を誰かに伝えたいと、サン・スーシの店に銘板を掲げるため女手ひとつで寄付を募る。エルザの夫ミシェルにヘルムート・グリーム。「ルートヴィヒ」で孤立した国王に直言し最後まで味方につく忠臣を演じました。監督は説明を排除し、名優たちによる、わずかのシーン、わずかの出番で戦争の背景に埋没し、忘れられようとしている人間の、踏みにじられた運命を刻印しています。

 

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