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特集「B級映画に愛をこめて」

2018年12月20日

特集「B級映画に愛を込めて10」⑥
ミッドナイトクロス(1982年 ミステリー映画)

監督 ブライアン・デ・パルマ

出演 ジョン・トラボルタ/ナンシー・アレン/ジョン・リスゴー

シネマ365日 No.2699

トラがしょぼい

 本作に共鳴できなかった理由。①ラストが妙にしんみりと収まってしまった。悲劇というより尻すぼみだった。②知事暗殺事件の黒幕は逮捕も検挙もされず放りっぱなし。③恋人サリー殺害時の絶叫を、映画の音入れに使う神経が悪趣味すぎる。④ジョン・リスゴーの殺し屋がちっとも不気味じゃない。ヒロインを殺すチャンスは何度もあるのに、ラストの花火シーンまで無駄に引っ張りすぎ。⑤トラボルタの脇に回る男たちのキャラがショボイから、ひとつも映画が締まらない。⑥ブライアン・デ・パルマの得意な撮影手法(超俯瞰とか、分割スクリーンとか)目新しさというより、またか、と思う▼おおむね以上です。B級映画の音入れに使う効果音技師(録音技師)がジャック(ジョン・トラボルタ)。彼は私服警官で、自分が作り上げた盗聴器を仕込んだおとり捜査で同僚を死なせてしまったトラウマを抱え、ピカイチの技術を持ちながら、しがない三流映画の音入れ屋をしている。トラボルタが27歳でした。「サタデーナイト・フィーバー」でデビューした後が続かず、「パルプ・フィクション」まで決め手になる作品がなかった。本作は監督も俳優も一流で、評価は悪くなかったのですが、なし崩しに埋もれてしまった感があります。トラボルタはコールガール、サリー(ナンシー・アレン)に恋する青年を演じます。ナンシーとトラボルタは、「キャリー」で、ヒロインの同級生を演じた二人です。後だしジャンケンになってしまうのですが、後年のジョン・ウー監督「ブロークン・アロー」や「フェイス/オフ」のトラボルタを見た身としては、どうしてもトラのキャラ設定がミスったとしか思えない。デ・パルマ・スタイルにはめ込まれすぎて、どことなく窮屈そうだ。悪でもなく、純情でもなく、だって嫌がるサリーに捜査の協力を無理やり頼んでやらせるなんて、男の勝手もいいところよ。そんなこんなで、本編のトラ主人公には共感度希薄なの▼ならばいいところはなかったのか。矛盾するけどやっぱりデ・パルマの強引な撮り方ね。画面二分割はもういいとしても、超絶俯瞰(360度広角を含めて)は一挙にスクリーンを引き締める斬新さがあります。ジャックが殺人の証拠を握ろうと録音テープと写真フィルムを照合しながら音を確かめていくシーンとか、たるみがなくてさすがですが、はっきり言って人物造型に深みがないから、トラやナンシーの見せ場がないのよ。ナンシーは肝心なところであっさり殺されてお気の毒。デ・パルマと別れたのは本作の直後ですが、これじゃ気にいらなかったはずよ。トラは27歳でした。体は引き締まって「サタデーナイト」の余韻を残しています。それに彼本来の知性的な風貌がよくわかります。