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特集「お正月/愛と勇気のわく映画」

2019年1月4日

特集「お正月/愛と勇気のわく映画」④
レディ・プレイヤー1(2018年 ファンタジー映画)

監督 スティーヴン・スピルバーグ

出演 タイ・シェリダン/オリヴィア・クック

シネマ365日 No.2714

ニッケルオデオン 

お正月 愛と勇気のわく映画

 ストーリーもさることながらポップカルチャーへのオマージュ満載はスピルバーグのエンタメ精神の爆発なのでしょうか。次から次「ジュラシック・パーク」あり、「宇宙戦争」あり、「E.T」あり「シャイニング」あり、「イコライザー」あり、「キングコング」は何度でてきたことか。「スーパーマン」に「エルム街の悪夢」シリーズ、「市民ケーン」のばらの蕾まである。無数に近いオマージの組み合わせが猛スピーディで展開する。その一方、物語はシンプルです。政治の荒廃やら自然破壊やらで、社会機能は失活、市民の暮らしは圧迫されスラム街で生き延びている。生きる目的を失った人類は、ゴーグル一つで夢を叶える仮想社会(VH)「オアシス」に耽溺しています。この映画は確かに面白いのですが、現実社会が虚しさの上に成り立つ砂上の楼閣であることをスピルバーグは嫌というほど見せ付けています。スクリーン全体にもゲームでバシバシやるアクションシーンはともかく、スラム街や主人公たちの住む劣悪で無味乾燥の部屋や、廃棄物ばかりの都市とか、暗い雰囲気がたっぷり漂っています▼現在オアシスでは創始者ハリデーの遺言が公開され、彼がオアシス内に隠したアイテム「イースターエッグ」を探すプレイヤー(ガンター)たちが3つの鍵を手にするため関門ゲームに挑んでいたが、「たまご探し」は始まって5年も経つのに誰も鍵を見つけていなかった。オハイオ州コロンバスに住む若者ウェイド(タイ・シェリダン)もその一人。彼のライバルとしては、オアシスを独占したい世界第二の企業IOIの社長ソレントが送り込んだガンターチームもいる。何しろ「たまご」まで行き着くと、オアシスの5000億ドルの資産の後継者となれるのだ。想像していたことがすべて現実となる。つまり本作は「宝さがし」の大冒険と、夢を追う人生の興奮と、そのプロセスを映像の飛翔感、万能感、達成感によって楽しむ映画です。が、それだけではない▼創始者の言葉「オアシスを設計したのは、現実世界が怖かったからだ。人との関係の取り方がわからずいつもビクビクしていた。自分の死期を知ることでやっとわかったのだ。現実はつらく苦しく、いいことばかりじゃない。でも現実の世界でしか味わえないのだ、うまいメシはね。なぜなら現実だけがリアルだから」。たったこれだけのことをスピルバーグが映画にすると、ニーチェも裸足で逃げそうな深淵を覗いた気にさせるのですから、スピルバーグとはまさに教祖ですな▼オアシスとはオタクのための夢の国でしたが、つらく苦しい現実でしか味わえないのが本当の人生だと、ちゃんとバランスを取っているところがスピルバーグのヒューマン・スピリッツです。資産を受け継いだウェイドはともに戦った仲間とともにオアシスを運営し、顧問に招いたのがオアシスの案内人オグデン・モロー。サイモン・ペッグが扮します。彼の給料はニッケル玉一枚。これ、意外と意味が深いのでは。20世紀初頭の、アメリカの庶民的な小さな映画館は、入場料5セントだったためニッケルオデオンと呼ばれました。ラストシーンにニッケルオデオンを連想させるなど、スピルバーグの映画への深い愛と信頼を思わせる締め方でした。短い出演ですが、サイモン・ペッグの登場に味わいがあります。