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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2019年1月11日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力8」①
素晴らしきかな、人生(2017年 家族映画)

監督 デヴィッド・フランケル

出演 ウィル・スミス/ナオミ・ハリス/キーラ・ナイトレイ/ヘレン・ミレン/ケイト・ウィンスレット

シネマ365日 No.2721

人生は乗り越えていける 

 豪華な配役ですね。主人公ハワード(ウィル・スミス)は立志伝中の人物。人呼んで「広告の哲学者」。共同経営者ホイット(エドワート・ノートン)と広告会社を立ちあげ、創業以来最高の業績を上げた祝賀パーティの席上、彼の理念を社員に呼びかけています。「広告を成功させるための基本を再確認しておきたい。君の“なぜ”への答えは何だ。なぜ今朝も起きた。なぜ朝食を食べた。なぜその服を着ている。なぜここへ来た。商品を売るためだけじゃない。会社へ来るのはつながるためだ。人生とは人が全て。広告とは人に伝えることが全てだ。いかにその商品やサービスが暮らしを豊かにするか。ではどう伝える。愛と死と時間だ。この3つが全ての人をつないでいる要素だ。人は常に愛を渇望し、時間を惜しみ、死を恐れるからだ」▼その3年後、6歳の一人娘を不治の病で亡くしたハワードは、生きる気力を失いゾンビ化していた。会社の業績はガタ落ち。買収されるしか道はない。ハワードと共に苦楽を共にしてきたホイット、クレア(ケイト・ウィンスレット)、サイモンはハワードが「死」「愛」「時間」宛に手紙を投函したことを知り、気力を取り戻させるため、3人の役者を雇い「死」「愛」「時間」を演じてもらう。「死」はブリジット(ヘレン・ミレン)、「愛」はエイミー(キーラ・ナイトレイ)、「時間」はラフィだ。3人はハワードのゆく先々で会い、ベンチや地下鉄の中で話しかける。ハワードが答える。あるとき子供が「ママ、あの人フェンスに向かって喋っているよ」と不思議がります。ハワード以外の人に3人は見えないのです。ハワードは遺族会合のセラピーで逡巡する。会を仕切っているのはマデリーン(ナオミ・ハリス)です。マデリーンはハワードを励まそうとするのですが、「来なきゃよかった」と捨て台詞を残して去る▼ホイットは離婚した後、娘が心を閉ざし自分を遠ざける。クレアは子供が欲しいが年齢的に時間がない。サイモンは家族に隠しているが難病を抱え、死期が近い。三人は三人とも「愛」「時間」「死」の悩みを抱えていました。マデリーンを訪問したハワードは彼女の娘が息をひきとる寸前のことを話されます。「病室では娘の生命維持装置が外されようとしている。私は廊下で待っている。隣にいた初老の女性が泣いている私に言ったの。見逃さないで、幸せのおまけがあるから。深い経験から出た言葉だった。1年ほどした私は全てのものと深いつながりを持っていることに気づいた。涙が出て止まらなくなった。それが幸せのおまけよ。娘の死は耐え難かった。でもそれは人生を無にすることではないの。死と向き合いきちんと人生とかかわって」とマデリーンは頼みました▼ハワードは役員会に出席し、所有権を委譲します。ブリジットからアドバイスされ、サイモンは死が近いことを妻に打ち明け、クレアは「時間」から「君は子供を産まなくても素晴らしい女性だよ」と言われます。ホイットは「愛」から自信を持って父親として振る舞えと励まされ、娘に「愛している」と告げます。マデリーンの家を訪れたハワードは「娘の名はオリヴィア。あなたの娘の名は?」ハワードは泣きながら「オリヴィアだ」と告白。いちばん辛かった娘の死を認めます。ハワードとマデリーンは元夫婦で、娘の死によって気力をなくしたハワードは離婚していたのでした。ハワードはもう一度人生に立ち向かおうと勇気を振り絞る。マデリーンと散歩に出た彼が、ふと振り返ると陸橋の上から「死」と「愛」と「時間」が自分を見つめている。マデリーンはハワードが何を振り仰いでいるのかわからない。彼女に三人は見えないのだ。ハワードは自分に見えた美しい幻想に、微笑み返しマデリーンの手をとって歩いていく。1946年のフランク・キャプラの「美しき哉、人生」とは異なり、本作のキーワードは「幸せのおまけ」です。どんなに辛い過酷な経験をしても、人生はそれだけでは終わらない、立ち直り、幸せになる「おまけ」をつけてくれる。ヘレン・ミレンが「死」を老獪に演じて、深い存在感を出していました。デヴィッド・フランケル監督には「プラダを着た悪魔」「31年目の夫婦げんか」などのヒット作品があります。