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特集「最高のビッチ」

2019年1月22日

特集「最高のビッチ7」② ヴィオレッタ・シュラロウ
コールド・キラー(2017年 劇場未公開)

監督 ステファン・ルツォヴィッキー

出演 ヴィオレッタ・シュラロウ

シネマ365日 No.2732

殺してやる 

特集「最高のビッチ7」

 ヴィオレッタ・シュラウロウと言ってもほとんどの人がご存じない女優だと思います。本作は劇場未公開だったけど割といい線いくのです。監督が「ヒトラーの贋札」のステファン・ルツォヴィッキー。どちらかというと沈んだ色合いの、空気のひんやりする映画が得意です。「アナトミー」も「アナトミー2」も大学の解剖学教室の殺人でした。エリートたちが自分を特別な人種だとトチ狂ってしまい、許しがたい犯罪にのめり込んでいくという。でも最後にきっちり落とし前をつけさせられる、彼のこういう律儀な作り方が、わたし割と好きなのです。本作も暗いですよ。ヒロインのエズゲ(ヴィオレッタ・シュラロウ)は夜間タクシーの運転手。昼はジムに通ってムエタイをやる。彼女が殺人事件の犯人を目撃し、狙われ、自分のジャケットを着ていたために従妹が殺されてしまう。彼女には3、4歳くらいの娘アダがいる。事件を担当したシュタイナー刑事は、ドラッグの前科があり、移民のエズゲの訴えに取り合おうとせず、子供を押し付ける▼犯人はエズゲの勤務先を突き止め、客を装い乗車して襲撃、アパートにも侵入した。刑事が紹介した保護施設も安心できない。エズゲはアダを連れて夜のウィーンを転々とする。自分の両親の元に預けるが取り返しに行く。父親は小児性愛、ロリコンの変態だ。多分エズゲも性的虐待にあっていた。エズゲは人に頼ろうとしない。無敵のスーパー・ヒロインではなく、ボコボコにやられてフラフラしながらやり返すところがリアルだ。ヴィオレッタの容貌が独特である。濃い眉、猛禽類のような鋭い目。面長で黒い長い髪をまとめ、細身だ。ジムのコーチをしている元カレに言わせると「君は殴るしか能がない。2年間振り回された。冷たい。愛情のカケラもない」。女では稀に見るタイプです。エズゲは敵との応戦で殺されかけ病院に収容されたが逃走した。いずれ犯人がここにも来ることがわかっているからだ。無言で荷物をまとめていると同室の肺ガンの女性が「外は寒いから、コートを着ていきな。私にはもういらないよ」。エズゲは感謝を込めて「ダンケ」。家に帰り鏡に写した身体中の傷跡を見てつぶやく。「殺してやる」▼どこにも当てはなく刑事のアパートを訪ねた。彼は妻に去られ父親と二人暮らし。その父は認知症で目を離したら下着をウンチまみれにする。夜中に起きて老父をトイレに連れていき、シモの世話をする刑事に、エズゲは彼が、嫌な意地悪な男だった印象を変える。捜査は難航していた。「君が目撃した犠牲者で8人目だ。テヘランで3人、チュニスで1人、トリポリで2人、ジャカルタで1人。惨殺の手口は同じ。まず皮を剥ぎ口に高温の油を注ぐ、犠牲者は娼婦で全員イスラム教徒だ」。刑事はエズゲを警察には内緒でかくまう。アダを膝に乗せてピアノを弾いてやったりする。エズゲは刑事に惹かれていく。「犯人は利口なやつで、公衆電話を使っている。犯行は5カ国にまたがるのに、電話はカイザーシュタットからだった」エズゲがふと口にする。「カイザーシュタットには国連があるわ」。5カ国の殺しと外交官が繋がった。都合よくわかりすぎたきらいはあるが、エズゲは犯人と最後の死闘で車ごと爆破する。女優アクションの傑作として「アトミック・ブロンド」をあげますが、ハードボイルドの佳品としては本作をあげます。従妹の子を連れ歩いて逃げ、逃げては追いつかれ、コテンパにやられるかっこよすぎないヒロインがよかったです。