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特集「最高のビッチ」

2019年1月27日

特集「最高のビッチ7」⑦ジェニファー・ジェイソン・リー
ヘイトフル・エイト(2016年 ミステリー映画)

監督 クェンティン・タランティーノ

出演 サミュエル・L・ジャクソン/カート・ラッセル/ジェニファー・ジェイソン・リー

シネマ365日 No.2737

悪魔的な紅一点 

特集「最高のビッチ7」

 ジェニファー・ジェイソン・リーってすごい女優なのだと、よくわかる作品です。吹雪に閉じ込められたワイオミングの一軒家で同宿した8人の男女。賞金稼ぎにニセ保安官、巡回首吊り執行人、多くの黒人を虐殺した南軍の将軍、正体不明のカーボーイたち。ジェニファーは賞金1万ドルが首にかかった、盗賊団の姉御デイジーだ。彼女を町に送り届け、絞首刑になるのを見届ける賞金稼ぎがルース(カート・ラッセル)。女に手錠をはめたまま行動をともにし、デイジーが口を利くたび殴りつける。デイジーの左目の縁はアザで真っ黒だ。上映時間ざっと3時間の長尺で(なんでもいいから決着つけてくれよな〜)と思い始める頃、シーンは大展開。山小屋で待ち受けていたのは、デイジーを奪還し絞首刑から救おうとするギャング団の4人。彼らは南軍の元老将軍だけ残して、小屋の持ち主や先客を殺し、偶然の泊まり客を装っていた▼南北戦争直後の時代であり、黒人差別がひどく、銃と暴力で解決するバイオレンスの連続。誰かがコーヒーに毒を混ぜ、まず二人が死ぬ。犯人は誰だ。みな犯罪者だ。怪しくない奴はいない。けたたましくデイジーが笑うたびに鉄拳が飛び、彼女は血だらけに、おまけに毒入りコーヒーでゲロするやつの吐瀉物をまともに被り、人相さえ定かでなくなる。この頑張りだけでもアカデミー助演女優賞候補になった値打ちあり。騙しあいと殺し合いの結果、デイジーは縛り首になり、重傷の男二人がぶら下がったデイジーをせせらわらいながら彼らも死ぬという、後味の悪さ最高の映画でした。紅一点のジェニファーがいなかったら、タランティーノの露悪趣味とグロテスク200%だけで終わったでしょうね▼ジェニファーのビッチは悪魔的です。姉を助けに来るギャング団の首領がチャニング・ティタムです。あっという間に頭を吹っ飛ばされて退場するのが残念ですが。彼が現れ姉を見てニヤリ「調子はどうだ、バカめ」「いいよ。あんたのブス顔を見たからね」。ギャング4人組はチームワークがよく、撃たれて床に倒れてからも目配せで(やれ)(わかった)というような合図を交わす。その一人がイギリス訛りを喋るオズワルドで、扮するはティム・ロス。「デイジーを殺すぞ」という脅しに慌てるふうもなく、「俺を町へ連れて行け、賞金1万5000ドルだ」「俺は1万2000ドルさ」ともう一人、死にかけている男が言う。タランティーノの男たちには暴力と酷薄と男伊達が渾然一体となっています。男たちはみな殺され、デイジーは一人になった。生き延びるチャンスは万に一つもない。転がっている死体をみな町へ運べばひと財産だが「あんたたちにその金は使えないよ。どっちも死ぬのさ」つっぱりとハッタリと悪と犯罪だけで生き、死んでいく女だ▼徹底した役作りで臨む、ジェニファーの芸域の広さと魅力には定評があります。「ヒッチャー」は、胴体を引き裂かれるヒロインを熱演。「ルームメイト」では女への病的な確執をつのらすサイコ女を。「黙秘」では、トラウマに苦しむ娘を演じましたが、ホルスタインみたいに貫禄のあるキャシー・ベイツを相手に、小柄なジェニファーがキュートでさえありました。アート系の監督にも好かれ「ショート・カッツ」ではロバート・アルトマン、「未来は今」ではジョエル・コーエン、「イグジステンズ」ではデヴィッド・クローネンバーグ。と思えば「モーガン プロトタイプL~」ではハイブリッドと心を通わす学者を。影と歪み、寂しさを抱いた女を演じたらヒケをとらない。「ブルックリン最終出口」の娼婦は未だに語り草です。