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特集「おっさんズ」

2019年2月1日

特集「おっさんズ」① ニコラス・ケイジ1
ダークサイド(2018年 スリラー映画)

監督 ティム・ハンター

出演 ニコラス・ケイジ/ロビン・タニー

シネマ365日 No.2742

弱くても卑屈じゃない男 

特集「おっさんズ」①

 レイ(ニコラス・ケイジ)は砂漠の町のモーテルを買い取った。事故で娘を亡くしてから夫婦仲がギクシャクし、引っ越して心機一転、生活をやり直そうとしている。6号室に初めて客が泊まった。若い女性客だ。経営が「軌道に乗れば穏やかに暮らせる」「私もそう思う」夫婦は希望が持てた。ある日レイは地下室の物置に細長い隠し通路があるのを知る。辿っていくと10号室がマジックミラーになり、室内を覗けるのだ。10号室を指定する客がいる。長距離トラックの初老の運転手。正体不明の女性。運転手は女性を連れ込みセックスに、女性客は女とSMプレイに耽る。キチンとお金を払ってくれるからレイは口やかましいことを言うつもりはないが、一度ノゾキをしたレイは興奮を覚えクセになる。ある日、モーテルのプールに死んだ豚が浮いていた▼翌日保安官のハワードがきて、犯人は「そのへんの不良だろう」という。プールでは以前にも怪奇な事件があった。クリシーという地元の少女が、お腹を割かれ、プールに放り込まれて失血死していた。6号室の最初の女性客が変死体で発見された。レイの留守中、保安官が来て「レイについて質問がある」と妻のマギー(ロビン・タニー)に言った…出だしは悪くないですよ。うらぶれた町に引っ越してきた中年の夫婦。ニコラス・ケイジは終始ダブッとしたネルシャツを着て、風采のあがらない安モーテルのオーナー。妻のマギーは夫ともう一度仲良くしようと努力するが、レイは相変わらず無口で「私は壁と結婚したのじゃないわ」と嘆く。レイの行動も奇妙だ。10号室の女性客が出かけていくと、夜でも車で後をつける。「心配事があるなら言って」と話しかけても「別に」。しかし保安官がレイに殺人容疑をかけていると聞いて「別に」で済ませられない。保安官はしきりに前オーナーのベンと連絡を取りたがっているが彼は姿を見せない。やっとレイはベンと会い「あのモーテルで何があった。隠し通路を作って10号室を覗いていたのだろ!」と問い詰めた。ベンは「もらった金は半分返す。警告だ。女房を連れて出て行け」言い終わらないうちに狙撃され命を落とす。逃走する車を見たレイはモーテルに急行する。10号室に保安官がいてマギーを縛り上げ、レイを待っていた▼ストーリーとしては突っ込み処いっぱいです。SMといったって「エロチック」なんてジャケ写のウソだし、彼女の役割もよくわからない。保安官こそ10号室のプレイを部屋の影に隠れて見ていた変態だ。6号室の女性に至っては、正体はおろか、殺された理由も明らかではない。モーテルの向かいにたむろする気色の悪い不良たち。最初は愛想よくレイに対応していながら急に態度を変えたガススタの主人。おかしな人物はあちこちに顔を出すのだけど、要は話を複雑にするための挿絵みたいなものだ。たった一つ、見どころはニコラス・ケイジの「頼りなげな顔」。隣の奥さんと浮気中、子供がベランダから墜落死した。妻はドラッグ中毒。夫は酒浸り。育児放棄のトラウマに責められ砂漠のモーテルに脱出したのだ▼ニコラス・ケイジの行くところ、勇壮・果敢ヒーローとは無縁。弱り目にたたり目の男に、なぜか神は救いと勝利を与えるのだ。頼りないけど、このおっさんは頑張るからだ。酒場でゴロツキに絡まれてもひるまない。武術の達人どころか、お腹は出ているし、一発殴られたら吹っ飛ぶ。それでも言うだけ言ってケガして帰ってくる。弱いけれど卑屈じゃないのだ。ブルース・リーのような無双の男だけが男ではない。男らしいヘタレ男に、ニコラス・ケイジが与えるリアリティは映画ファンの信奉に近い。