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特集「おっさんズ」

2019年2月7日

特集「おっさんズ」⑦ ジョン・トラボルタ
ステイン・アライブ(1983年 ミュージカル映画)

監督 シルベスター・スタローン

出演 ジョン・トラボルタ

シネマ365日 No.2748

トラの肉体美 

特集「おっさんズ」

 シルベスター・スタローンがミュージカルを脚本・監督したと知って、どんなものになるのだろうと思ってみました。「サタデー・ナイト・フィーバー」の続編だけど、主人公トニーがジョン・トラボルタという他に関係性はほぼなし。スタローンが撮るダンスシーンはトラのダンスもさることながら、監督の意図は男の筋肉美に惚れ惚れさせようとするみたいに気合が入っています。でもね、この映画で何が気にいらないと言って、主人公のキャラが一番ムナクソ悪いのよ。スタローンとは男の見せ場作りにのめり込んできた映画人なのだとはわかるけど。トニーはブロードウェイで大スターになることを夢見て、ブルックリンからマンハッタンに引っ越してきたものの、安下宿暮らし、オーディションには落ちっぱなし。ダンス教室のインストラクターやダンスクラブのウェイターをして糊口をしのぎ、ダンス教室の同僚ジャッキーと付き合っている▼そもそもトニーの態度が悪いのだ。ダンス教室のレッスンには生徒を待たせて平気で遅れてくる。クラブの歌手もやるジャッキーに「なんだって6年間もその他大勢で歌っているんだ」「女性ダンサーは寿命が短いから現実的なの」。ジャッキーは地道に働いて人生計画を立てている。彼女から見ればトニーは芽の出ないごくつぶしなのに、彼女は彼の才能を信じている。スタローンの好きな設定ね。ジャッキーの気持ちを知りながらトニーはイギリス人ダンサーのローラに一目惚れ。ジャッキーを放り出す。図々しくローラを楽屋口で待ち受け「君の才能について話をしたい」「もう知っているわ。あなた、女をバカにして楽しんでいるの?」「よかったら付き合ってくれ。スーツも持っている」。ローラは端役のオーディションを紹介してやる。彼はローラと関係を持つが、女のほうはワン・ナイト・ラブだと割り切っている。トニーはローラに追い出されるとジャッキーに電話して仲直りし、店が終われば待っていると約束したにもかかわらず、ふらふらとローラを追いかけ、ジャッキーは真冬の夜の2時のマンハッタンで凍えそうになる▼たちまちローラにふられジャッキーの店に来る。「こんなに愛しているのにひどいわ。今後は友だちよ」。ローラに嫌われたトニーは何年ぶりかで家に帰り、母親に「昔のツッパリを反省している」「トニー、いい子ぶらないで。ツッパリのおかげであなたは貧しい町から抜け出せたのよ」「俺は間違っていなかったのか、ママ」。スタローンの脚本によれば、女は限りなくアマ男を救済する役割にあるのと一緒だ。ジャッキーは新しい恋人を見つけた。同じクラブでリズムギターを弾くカールだ。トニーは散々男の悪口を言い「俺たちは楽しく付き合っていた。俺の態度は間違っていた。お前を失いたくない。お前といると心が休まる。ヨリを戻したい」とベッドへ。女に寛容だけを求める男です。ジャッキーがおとなしい女だから命があったようなものの、フツーだったら窓から突き落とされていますよ▼スタローン監督も、いくら何でもこの調子で最後まで引っ張っていくのは無理があると思ったのか、途中でダンスシーンを強引とみえるほど導入、トラボルタの華麗な肉体を堪能させてくれますが、それがミュージカルというより踊るボクシングみたいなの。トニーとローラが主役で踊るはずを、トニーは途中でローラをステージの端にブン投げ、台本にはないソロを踊りだす。見事なダンスではありますが、見せ場作りのためにとってつけた違和感はどうしようもない。だってそれまでトニーは箸にも棒にもかからないダンサーという位置付けだったし、ダンス教室のイントラの仕事もバカにし女を追いかけてばかりで、必死でトップを目指そうという気迫なんてなかったからね。「ステイン・アライブ」の歌詞でうまくつないでいたけど、ロッキーの「一人舞台」で映画を収束させる作り方と同じね。トラボルタの「俺オレ」だけでも閉口するのに、場外乱闘みたいなダンスで興ざめした。本作以後、スタローンがミュージカルは無論、ラブロマンスに色目を使わなかったのは賢明というべし。ただひとつ「サタデー・ナイト」から7年、贅肉もつけず見劣りしなかったトラのダンスと肉体美に一票。