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特集「ベストコレクション」

2019年2月12日

特集「春の星/如月のベストコレクション」② 
はじまりの街(2017年 家族映画)

監督 イバーノ・デ・マッテオ

出演 マルゲリータ・ブイ/バレリア・ゴリノ/カテリーナ・シェルハ

シネマ365日 No.2753

人生ほどいいものはない

特集「春の星/如月のベストコレクション」

 「ケチつけると怒られそうな映画」というジャンルを自分勝手に、密かに作っているが、本作なんかまさにその中の一本。ハートウォーミングで人生賛歌そのものです。エンディングで歌い上げられる「This is my life」は本作のレジュメみたいです。人生ほどいいものはない、辛いことや苦しいことが重なって、美しくて美味しいミルフィーユみたいになる…。違いないとは思うのですが、まあね、あんまり断言されると、もうちょっとビミョーなものがあるのではないかな、と思ったりするのですが。舞台はイタリアの北の都トリノ。落ち葉敷き詰める晩秋の歩道、古い尖塔など、ロケーション効果はバッチリ。そこで織りなされる母と息子の成長物語です。母アンナ(マルゲリータ・ブイ)は夫の暴力に耐えかねてローマから息子アンドレアと共に、親友カルラ(バレリア・ゴリノ)を訪ねてきた▼13歳の息子は引っ越したばかりの町で友達もいない、好きなサッカー仲間もいない、一人になれる自分の部屋もない。母親に「消えろ、大嫌いだ、毎日自転車でバカみたいに走り回るだけだ」と喚きちらし、母親が買ってきたお菓子を床にぶちまける。母親はこんな思いにさせるのは自分が家を出たからだ、と自らを責め、腫れ物に触るように扱うからますますつけあがる。こんなとき「バカヤロー、てめえ、何様のつもりだ」とガツンと言ってやれる男の存在って、あったらいいわね〜。ところがこの映画ではみなメロメロにやさしいのだ。母親は仕事探しに奔走し、大きなテナントの掃除婦になる。三交代で夜勤もある重労働だ。息子だけが世界の不幸を一人で背負っているようにふてくされている。親友のカルラは舞台女優だ。陽気で気さくで、息子を相手にセリフの練習をする。息子もカルラが相手だと愛想笑いなんかする。要は母親に甘えきっているのだ。イバーノ・デ・マッテオ監督は息子がまるで自分の分身みたいに好きなことを言わせ、後半に入って収束にかかる。息子は娼婦に惹かれ、追い払われながらしつこく彼女の前に出没し、「ほら、あんたの客だよ」と相棒にからかわれるのがラリッサ(カテリーナ・シェルハ)。シュッとした女優で、ベネツィア国際映画祭のベストドレッッサーに選ばれていた▼父親から「元の家族に戻ろう、やり直そう。アンドレアは元気か」と手紙が来る。息子は父親が恋しい素振り。カルラは「帰りたくなったら新聞をご覧。毎日あんたみたいな女が切り刻まれて、袋詰めにされて川に浮かんでいるわよ!」断固反対する。向かいのカフェのオーナーは元セリエAの選手。事故で人を死なせて引退した。彼は知らない土地で心細がる息子と母親の力になる。いいのだけど、どうしてこう理解のある親切な人ばかり現れるの? 内容のほとんどは息子のブータレと、振り回される母親とカフェの主だ。息子は父親の手紙を見つけ、家出する。が、なにができるわけもなく、橋の欄干に腰掛けて川面を見つめているところを、血相変えて探しに来た母親とサッカー親父に保護される▼父親との関係がどうなったともわからず、息子は仕事中のラリッサにショックを受けて車の窓のガラスをバリン、営業妨害して逃走、ラリッサに別れの手紙を書くが、無情にも風で吹き飛ばされた。自分のムシャクシャに酔っているだけの青春でも「人生ほどいいものはない」のだ。反対はしないよ。母と息子は唐突と思える仲直りをする。母親は百万の味方を得たように生気が戻る。カルラは「私の家にいれば家賃はタダよ。三人一緒にいるのに慣れてきたの。テレビも買うわ」彼女はテレビが大嫌いで家に置かなったのだ。息子にとってはこういうことが人生の苦悩だった。物語の中途半端も甘ったるさも、人生ほどいいものはない…正面切って堂々と歌い上げられるうち、催眠術効果のように、どんなヘソ曲がりもその気になってしまうにちがいない。ええい、ヤケクソだ、一緒に歌ってやれ「人生ほどいいものはない」グッド!