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特集「ベストコレクション」

2019年2月17日

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑦ 
ウィンド・リバー(2018年 事実に基づく映画)

監督 テイラー・シェリダン

出演 ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン/ジョン・バーンサル

シネマ365日 No.2758

凍った地獄 

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑦

 次の3つの理由でテイラー・シェリダン監督に敬意を捧げたい。①アメリカ政府最大の失敗と言われる、ネイティブアメリカンの保留地「ウィンド・リバー」と、そこに遺棄された国民にしっかり焦点を当てたこと②無法地帯の荒廃、それによって生じるレイプと殺人を具体的に指摘したこと③極寒の自然と閉鎖社会の闇に立ち向かう新米捜査官と、彼女を助けるアメリカ版健さんに痺れたこと▼真っ白は雪原で少女の死体を発見した地元のハンター、コリー(ジェレミー・レナー)は捜査に来たFBIのジェーン(エリザベス・オルセン)にこう説明します。「ワイオミング州ランダーは夜の気温がマイナス30度になる。それほどの冷気を走りながら吸うと、肺が凍って血が噴き出す。少女がどこから来たにせよ、ここまで走ったところで肺が破裂し、自分の血で窒息死した」「裸足で走れる距離って?」「生きる意志にもよる」そしてつぶやいた。あの娘は強い子だと。他殺にしないのかと問うジェーンに検視医は「無理だ。繰り返しレイプされている。明らかに殺人だ。しかし死因は肺出血だ。他殺にはできない」「こんな広い土地を部族警察のたった6人でカバーしているのよ」。安易に自然死で片付けず真相を究明しようとするジェーンに、最初は軽く見ていた警察も見直す。地元の事情が分からず捜査に行き詰まったジェーンはコリーに協力を頼みます。コリーの娘も3年前に殺され事件はうやむやになっていた。殺された少女ナタリーの父マーティンはコリーの親友だった。息子は家に寄り付かず妻は心を病み、最愛の娘は殺された。憔悴する父親にコリーが言う。「事実を受け止め、苦しめば娘と心の中で出会える。娘がくれた喜びも覚えていられる。痛みから逃げちゃダメなんだ。逃げると全てを失う。娘との思い出もひとつ残らず。ともに生きたいなら、とことん苦しめ」▼ナタリーには恋人がいたことがわかった。石油発掘現場の警備員の一人マット(ジョン・バーンサル)だ。間もなく彼も死体で発見された。聞き込みに行った警備員詰所で、彼らが集団暴行でナタリーとマットを殺したことがわかる。本作のテーマは犯人探しのミステリーではなく、犯行が呼び起こされた背景の、アメリカに見捨てられた保留区の極貧と社会的孤絶が主題です。激しい銃撃戦によりジェーンは重傷、部族警察長と保安官3人は射殺、ジェーンの息の根を止めようとした警備員たちをコリーが狙撃する。一人だけ逃げた。むしろ逃がした。コリーにはマーティンとの約束があった。生き残った一人をコリーは州の最高峰ガネットピークに追い詰める。8月にも雪が積もっている寒冷地だ。まして真冬。男は裸足にさせられた。男は呻いた。「ここは凍った地獄だ。なんの楽しみもない。どこもかしこも静まり返っている」気も変になるといいたいのだろう。コリー「ここの人々は強制的に連れてこられた。雪と静寂以外は全て奪われたそうだ。ナタリーと同じ条件で逃がしてやる。警備員寮から遺体までの距離がわかっているか」「知らん」「10キロだ。彼女は裸足で足首まで凍傷になりながら走ったのだ。お前には100メートルも無理だろうが、行くしかないな」男は走り出し、コリーの視界の中で倒れた。コリーはマーティンを訪ねた。「それで、犯人は逃げたのか?」「いいや、逃げていない」「どんな最期だった?」「哀れだった」そして繰り返す。「お前の娘は強い娘だった」▼ラストの字幕が重く、痛い。「ネイティブアメリカン女性の失踪に関する統計は存在しない。失踪者の数は不明のままだ」。ジェレミー・レナーは「ハート・ロッカー」で地雷を除去する寡黙な兵士でオスカー主演男優賞にノミネート、メキメキ力をつけ「ボーン・レガシー」「メッセージ」と幅広い役に主演。エリザベス・オルセンは「マーサ、あるいはマーシー・メイ」で注目を集め、「レッド・ライト」「キル・ユア・ダーリン」など好調にキャリアを伸ばしています。