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特集「ベストコレクション」

2019年2月19日

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑨ 
あなたの旅立ち、綴ります(下)(2018年 社会派映画)

監督 マーク・ペリントン

出演 シャーリー・マクレーン/アマンダ・セイフライド/アン・ヘッシュ

シネマ365日 No.2760

失敗こそあなたをつくる 

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑦

 「私の教えを実践しそうな悪ガキ」としてハリエットは、少女ブレンダに目をつけた。図書館の十進法が意味ないとして蔵書をムチャクチャにした子だ。反抗的な少女にハリエットは逆らわず、一つずつ彼女の言葉遣いを言い直し、それだけでいかに立派なレディになったかをほめる。ブレンダはすっかり素行を改める。一丁上がり。次にローカルのラジオ局に行きDJをやらせてくれと頼む。担当者がいるとディレクターが言うと彼女にクビを言い渡す。理由は「声が細いし音楽の趣味が平凡。真のDJがこだわるのは曲の流れや順番やまとまりよ」。ディレクターは感心し、朝イチの放送に彼女を起用する。ディレクターとアンが、お互いに関心ありそうだと見たハリエットは、一流のレストランに彼女を誘えと進言する▼エッセイストになりたいというアンの、原稿を読んだハリエットは鼻で笑う。「自分だけの世界観を持っていないとエッセイは書けない。あなたは自分を書こうとしているのに自分を理解していない。自信のなさが野心をダメにする」。くたばれと罵ったが痛いところを突かれたのはわかった。ハリエットの娘エリザベス(アン・ヘッシュ)が母親と絶縁したのは、婚約パーティの席で相手をダメ男とこき下ろしたからだ。何十年も口を聞いていない娘に会いに行く。娘は「お母さんに反抗してきたのに、私も同類だった。強迫性人格障害と診断されたの。病気よ。問題はみな自分以外の人にあると思い込む。今からでも治療できるわ。肩の荷を降ろして幸せになるの、お母さん」「私は変わらないわ」「孫がいるのよ。夫のジョルジュは国で指折りの神経科医よ。セラピーを受けて。このままじゃ子供にも孫にも会わせられないもの」。ハリエットは大声で笑い出す。「自分が間違った時は笑うの」と同席したアンが解説する。笑いながら「あなたは素晴らしい夫と子供がいる。それに幸せなのね。勘違いしていたのよ。私はいい母親だったのよ」。エリザベス「私は自分で成功したのよ」「いいえ。私のおかげ」娘は冷たく「なぜ来たの? さようなら。お母さん」そう言って去る▼帰路、ペネロペ湖のほとりで一泊した三人は夜の湖で泳ぐ。このシーンで映画は、ハリエットの4つの課題は全て解決できたと示唆しています。文字通りの家族ではないが、家族に等しい友だち、尊敬、誰かに人生を変えさせる何かを与えること。ハリエットは心うっ血性心不全だと診断されても自分の生活を変えない。しかしいつ死ぬかわからない状況だから、いますぐ訃報を書いてとアンに頼む。アンは訃報とエッセイも書いた。ハリエットに読ませる。「才能あるわ。訃報を書くのはね。エッセイはでも少女の空想に過ぎない。大人の女として現実を書いてほしいの」ハリエットの批評は妥協がない。「失敗するのが怖い」「失敗こそあなたをつくるの。失敗があなたを賢くし強く自立した人間にするのよ。娘に言えなかったことをあなたに言わせて。倒れなさい。思い切り失敗するのよ。失敗すれば学べる。あなたの人生はまだ始まっていない」泣きじゃくるアンをハリエットはやさしく抱きしめた▼気持ちのいい作品です。今年(201884歳のシャーリー・マクレーンが有無を言わせない貫禄で演じきる。年の離れた女性がお互いに学ぼうとする。何かを始めるのに遅すぎることはない。言い尽くされていても、シャーリーが言うと実感があります。尊敬する女性像は、という質問に「アマンダ(セイフライド)のように自分を知ろうという女性ね。アマンダでなければあの大役は務まらなかった」とベタ誉め。「女優業以外に母親として、夫や子供も理解しなくちゃ」と長い人生の道のりをアドバイスしています。劇中のDJ役トーマス・サドスキーはアマンダの実夫です。