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特集「ベストコレクション」

2019年2月20日

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑩ 
クワイエット・プレイス(2018年 家族映画)

監督 ジョン・クラシンスキー

出演 エミリー・ブラント/ジョン・クラシンスキー/ミリセント・シモンズ

シネマ365日 No.2761

中身の濃い95分 

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑦

 一種の密室劇です。聴覚の異常に発達した(目は見えない)エイリアンが地球に現れ地域住民を全部食べてしまい、街はゴーストタウンと化した。アボット一家5人は手話で意志を通じ合い、地下室に隠れ生き延びてきた。ある日母のイヴリン(エミリー・ブラント)と父のリー(ジョン・クラシンスキー)は、必要な薬を買いにーといっても誰も店にいない薬局に行く。離れたら危険なので子供達も一緒だ。みな裸足だ。彼らが手話できるのは、長女のリーガン(ミリセント・シモンズ)が聴覚障害なので、家族は手話に長じていた。物音ひとつしないスクリーンです。怪物について具体的な説明はありません。とにかく宇宙からやってきて人類を破滅させるやつだとなっている。昆虫のような長い節足で宙を飛ぶように襲いかかる▼リーガンが妹のほしがるおもちゃを与えたため、その音が怪物を呼んで妹は食い殺された。リーガンは自分だけが家族の厄介者だ、父親も自分を憎んでいるというトラウマから逃れられない。やがてイヴリンは妊娠し臨月となる。家族は沈黙を守り生きてきたが、赤ん坊が生まれるとどうなる。泣かないですむはずがない。怪物は気配で生き物が近くにいることを嗅ぎつけ、家の中に入ってくる。足音を忍ばせたイヴリンが階段に突き出ていた五寸釘で足裏を刺し、必死で声を抑える。父と息子はある日滝のそばまで行き、ようやく言葉を発して喋った。暗い顔をしている姉を気遣って、弟は父親にリーガンを愛していると伝えてあげなくちゃダメだよと進言する。やさしい子です。二人は助け合ってトウモロコシの貯蓄庫で生き埋めになりかけた危機を脱します▼いよいよイヴリンのお産です。侵入してきた怪物が家中を嗅ぎまわる。バスタブに隠れたイヴリンは口を押さえ陣痛をこらえる。緊急危機の合図である赤い布が家に張られたのを見て、ジョンは妻が危険にさらされているのを察知した。息子に花火を上げて大きな音を出すよう言い聞かせ、爆発音に紛れてイヴリンは子供を産み落とす。「エイリアン」シリーズのような超弩級のモンスターではないにしても、体も小さいし視力もないし、でも瞬間移動して内臓を食い破るのがひどい。殺された妻の残酷な死体に耐えかね、自殺する住民も出ています。怪物が子供達を見つけた。襲いかかろうとする怪物の前にパパが立ち、手話でリーガンに(愛している。ずっとお前を愛していた)と伝え思い切り大声を発する。パパは死にます▼次なる標的は母親と赤ん坊、いや一家全員です。地下室に怪物は入ってきた。パパは地下室で怪物対抗策を練っていた。「弱点は何?」パパはそれを探っていた。リーガンの補聴器から鋭い金属音が漏れ、怪物が怯んだ。誰にでも急所はある。リーガンは拡声器に補聴器を近づけ音波を拡大しました。のたうつ怪物。でも負けていない。このやろう、憎しみに燃えリーガンに襲いかかる。怪物の前に立ちふさがったママが銃をぶっ放す。頭が砕けあえない最期。拡声器から発する金属音が広がり、怪物は街から逃走した。ティム・バートンの傑作「マーズ・アタック」のオマージュでしょうか。大掛かりな舞台装置はなくとも、歴史大作でも宇宙戦争でもなくても、ほとんどセリフはなくとも、スピーディかつヒューマンな、最後まで脇見させない映画は作れる。わずか95分の中身が濃かったです。ホラーというより家族映画ですね。