女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2019年2月25日

特集「春の星/如月のベストコレクション」⑮ 
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(下)(2018年 事実に基づく映画)

監督 スティーヴン・スピルバーグ

出演 メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン

シネマ365日 No.2766

わたしは寝るわ 

特集「春の星/如月のベストコレクション」

 監督は表舞台の男たちの報道戦線を描く一方、キャサリンの決断に至る「女の人生」を深い理解とともに描出します。それを受け持つ女優がメリル・ストリープ。役者に不足はありません。ときに細く重く、ときに清澄に、融通無碍の表情を声に与え、過去を回顧し、今を語る彼女の独白術は洗練を極め、本作の白眉でもあります。キャサリンは娘に言う「私はあなたたちのために会社を守りたかった。守ったわ。守り抜いた。あの言葉知っている? 説教する女は後ろ足で歩く犬と同じ。うまく歩けない、歩けたら驚きだ。サミュエル・ジョンソンよ」「ばかげているわ」「でも女はそう思われていたのよ。私はこのような仕事につくはずではなかった。私はあなたたちを育て自分の人生に幸せを感じていた。それが古い時代のように崩れ去った。夫が死んだ時私は45歳。仕事をするなんて考えてもみなかった。何よりも愛するからこそ失敗したくなかった」キャサリンとは晴天の霹靂のように未知の領域に踏み込み、長いプレッシャーと不安と責任に耐えた女性でした▼難題が生じた。ベンが走り込んできてタイムズとポストの情報源が同じであることは「法廷侮辱罪だ。我々は全員投獄される」。役員たちは騒然とする「今なら印刷を止められる」時刻は深夜12時を回った。印刷工場からは緊急の電話が鳴る「限界だ、輪転を回さなければ間にあわん」。「ケイが重罪犯になるのは望まん」「起訴は非常事態の条件を満たす。株式公開はできん」。喧々諤々の中でキャサリンが言う「公開の趣意書にはこうもあるわ。新聞の使命は優れた取材と記事にある。新聞は国民の繁栄と報道の自由のために尽くすべきだと。つまり新聞の使命を銀行も承知だと解釈できる」「これは非常事態だぞ」「あらそうなの? 誰にとって? 新聞にとって? ニクソンやホワイトハウスにとって? ベン、保証できる? この記事で兵士を危険にさらさないと」役員の一人が叫ぶ「キャサリン、会社の遺産が危機に瀕しているのだぞ」「私は誰よりも長く会社とともに生きてきた。遺産? もう父の会社じゃない。夫の会社でもない。私の会社よ。そう思わない人は役員でいる必要はない。保証できる? ベン」「100%」「それなら決断は変わりません。私は寝るわ」。さっさと退出するキャサリン。彼女が新聞事業を引き継いだ時からメンターとして実務を支え、おそらくその場にいる誰よりもキャサリンを知るフリッツ(ワシントン・ポスト取締役会長)は黙ってうつむき、笑いをこらえた。印刷が始まった。巨大な鉄の塊が音立てて新聞を刷り出す。轟々と鳴る輪転機のそばに記者が、整理が、印刷技術者が待ち受け、一部、二部、ベルトから流れ出るインクの匂いのする新聞を引き抜く。ヘッドラインは「米国ベトナム選挙延期を画策」▼編集局では女性記者がわめいていた。「靴やドレスの記事を書かされるのはもうウンザリよ。女だからという考えが間違っているのよ!」。ライバル紙タイムズは一面で堂々とぶち上げた。「我々はワシントン・ポスト社主の判断を支持する」。ペンタゴン文書の公表をめぐり、報道の自由対最高機密の保持が法廷で争われた。1971年7月1日判決。「建国の父たちは報道の自由に保護を与えた。民主主義における基本的役割を果たすためだ。報道が仕えるべきは国民であり、統治者ではない」。陪審員は6対3で新聞の勝利だった。シーン転換。夜のホワイトハウス。窓辺に男の影が映る。彼は電話でこう命令している。「はっきりさせておく。これからは二度とワシントン・ポストの記者をホワイトハウスに入れるな。何があろうと二度と。礼拝にも妻が主宰する会にもだ」。やがてある深夜、ワシントン警察の電話が鳴った。「ウォータゲート・ビルの警備員です。ビルに不法侵入者がいます」ニクソンの政治生命を奪ったもう一つの激震が、低い地鳴りとともに近づいていた。原題「ザ・ポスト」はワシントン・ポスト紙の愛称です。キャサリン・グラハムは全米で初めての日刊紙発行人となった女性です。この映画の重厚さに比べたら、もはやどうでもいいことかもしれませんが、本作はアカデミー作品賞、主演女優賞にノミネートされました。