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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年3月6日

特集「映画に見るゲイ11」280 
愛についてのキンゼイ・レポート(下)(2005年 伝記映画)

監督 ビル・コンドン

出演 リーアム・ニーソン/ローラ・レニー

シネマ365日 No.2775

あなたは命の恩人です 

特集「映画に見るゲイ11」

キンゼイ教授はロックフェラー財団の支援を取り付け、アメリカの全人口を200のグループに分け、グループごとに4001000人を、約10万人を調査することにした。1948年・53年に「キンゼイ・レポート男性版・女性版」を発刊。タブーを打ち破り、性科学の地平を開いた業績として高く評価された。キンゼイが強調したのは「本来自由であるべき性が道徳偏重社会で恥ずべきこととされ、全く無視されることもしばしばだった」ことだ。「バーバラは40歳で初めてオーガズムに達した。たいていの女性にとって膣口は単なる穴で感覚がない。陰核で達するのは未成熟だと言われ、女性は膣で達しようと懸命に努力してきた。だが生物学的には無理がある。精神科医は不感症であるとしました」▼しかし順調にばかりはいかなかった。FBIの同性愛者捜しに協力しなかったという理由で、キンゼイはフーバー長官ににらまれた。調査方法にも「苦情の声が出ている」とロックフェラー財団は資金の継続を打ち切った。後年クリント・イーストウッドが映画化した、フーバー長官の伝記「J・エドガー」を見ると、この時のFBIは何を意図していたのだろうと思う。インディアナ大学の教授会ではこうだ。「学生数が増え黒字化したのはキンゼイ教授の功績だ。黒字のいくらかを教授の研究費に回すべきかと思うが」の提案に、ベストセラーを出した時にはもてはやした教授会が沈黙、潮目の変わったキンゼイに手を差し伸べなかった。誰しもが落ち目と見たキンゼイに、ある日女性が訪れた。面接調査の一人だった。「結婚して23年。子供は3人授かりました。末っ子が大学に受かり、私は働き始めました。秘書の女性と出会い親しくなり彼女に恋心を感じた。自分でもショックでした。忘れようとするほど想いが強くなった。自分の気持ちを偽って生きる辛さがわかりますか。誰にも相談できず苦しみから逃れる方法を考えました。お酒です。結局夫に捨てられ子供たちもそっぽ。いっそ死のうかと…」キンゼイは言った。「結局社会は少しも変わっていないのですね」。女性は目をあげて声を強くした。「いいえ。変わりましたよ。ずっとよくなりました。あなたの本のおかげです。自分と同じような女性が大勢いることを知りました。思い切って友だちに告白した。なんと彼女も同じ気持ちでいたのです。楽しいお付き合いを始めて3年になります。キンゼイ博士、あなたは命の恩人です」▼キンゼイはインタビューでの質問「性については多くを語っていますが愛については一言も触れておられないのはなぜですか」にこう答えている。「愛は測定できないからです。科学的に分析できない。つまり我々は愛について無知なのです」。キンゼイは妻マックを誘って、樹齢一千年を超える大樹の森を散策しながら語りかける。「君にンベエレ族の話をしたかな? 古代東アフリカの種族だ。木は人間の出来損ないで、根が生えて動けず悲しんでいると信じていた。だが私は不機嫌な木を見たことがない。大地に根を張りどっしりしている。木であることを楽しんでいる」歩き出した夫の背中に「あなた、どこへ?」「行こう。仕事が山ほどある」振り返って笑う仕事の虫に、妻は微笑みを返す。