女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年3月7日

特集「映画に見るゲイ11」281 
レッド・エージェント 愛の亡命(2016年 劇場未公開)

監督 シャミム・サリフ

出演 レベッカ・ファーガソン/アンチュ・トラウェ

シネマ365日 No.2776

雪の下の新芽 

特集「映画に見るゲイ11」

 なぜシャミム・サリフ監督が、サイドストーリーであるローレン(レベッカ・ファーガソン)と、モスクワの記者、マリナ(アンチュ・トラウェ)の恋愛関係を設定したのか、腑に落ちなかったのです。主なるテーマはローレンの叔母カティヤ(レベッカ二役)と、彼女の夫サーシャの亡命です。カティヤの両親は反体制であるという理由で処刑された。カティヤはそんな祖国に絶望し、アメリカのスパイとなって情報を流している諜報員です。任務として外務副大臣の上級秘書であるサーシャに近づき、情報を取ろうとするが、どちらもが惹かれあって結婚する。夫を裏切っている辛さに耐えられず、カティヤは自分がスパイであることを打ち明ける。事実を知ったKGBがサーシャを生かしておくはずがなく、カティヤは夫を亡命させる。自分は後から行くというが、すでに彼女は死を覚悟していて、諜報員の上司ミーシャに射殺される。それが1960年代の話▼冷戦が終わり、ローレンはモスクワの展示会に出品を要請された。家族の故郷であり、叔母の消息を知りたいとローレンはモスクワに着く。孤児となったローレンをミューヨークで育ててきたのが叔父サーシャだ。モスクワの美術展でローレンは取材に来たマリナに会う。マリナはサーシャの上官の娘。結婚式に父と共に出席した時は7歳だった。父は部下のサーシャの亡命の責任を取らされ処刑となった。マリナは復讐のためサーシャを引き寄せる手段として、ローレンをモスクワに呼んだ。アクション物になれたスパイ映画としては淡々としています。ところがローレンはマリナに一目惚れ。マリナも(こいつは仇の片割れだ)と感情を抑制していたのですが、やっぱりローレンは魅力的だ。突っ張っていたマリナがローレンのキスにうつむきながら笑顔になってしまう▼姪を心配した叔父がモスクワに来て、三人は鉢合わせ。父はあなたのせいで殺されたとマリナは告げる。サーシャは当時の自分の亡命が波及させた悲劇を謝罪し、マリナは長い間の怨念を水に流します。収まらないのはローレンで、叔父をおびき寄せるための道具にマリアは自分を使ったのかと怒り、マリナを追い出す。しかしカティヤが書き残した絶筆を読んで、涙にむせぶ叔父を見て、不幸な時代に生きた叔父や叔母は、痛ましい犠牲を払った。これ以上過去にとらわれても誰も幸福にはならない…ローレンを追ってきたマリナと雪道を歩くシーンが新世代の人生を切り開く象徴のように見えます。監督の着地点は結局ここだったのではと思うのです。レベッカ・ファーガソン(「跪く女」「M:I/ローグ・ネーション」「ガール・オン・ザ・トレイン」)っていう人、ラブシーンでもキスシーンでもあんまりベタッとしないのね。受けるアンチュ・トラウェが「パンドラム」「マン・オブ・スティール」「黄金のアデーレ」「クリミナル 2人の記憶を持つ男」などと硬派が多い。原題は「雪が降っているにもかかわらず」。雪の下から固い新芽が頭をのぞかせたように感じられました。