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特集「フレンチ・ノワール」

2019年3月19日

特集「フレンチ・ノワール」⑤ 
最後の切り札(1942年 犯罪映画)

監督 ジャック・ベッケル

出演 ミレーユ・バラン

シネマ365日 No.2788

ベッケル監督デビュー 

特集「フレンチ・ノワール」

 ジャック・ベッケルの監督デビュー作。彼の「赤い手のグッピー」「肉体の冠」「現金に手をだすな」「モンパルナスの灯」を先に見ていたので、本作は平和で明るいおとぎ話みたいな映画でした。バディものです。出だしからして「この映画の舞台は空想の国カリカルである」と字幕が入ります。主人公は警察学校で首席を争うモンテスとクラレンス。モンテスは人受けがよく、同僚は「首席ならモンテスがいい。クラレンスならむかつく」と評されている。どっちかをトップにするのにどう決めるか。「追試にしてください。実際の犯罪者の捜査で」と二人は申し出て、現場に派遣される。高級ホテルで殺人事件が起きた。現場に来た二人は刑事候補生ということで捜査に当たることを許される。こんな話、あるはずないよね。まったくメルヘンチックなのだ。有名な犯罪者アマニトが税関を巧みに通り、ホテルに到着したのち殺された。同行者はパールという金髪の女性。彼らの隣に部屋を取ったのがアマニトの仲間のルディだ。アマニトが持逃げした40万ドルを追ってカリカルに来た。妹のカトリーヌ(ミレーユ・バラン)を同行していた▼モンテスとクラレンスはどちらかがルディに近づき、信頼を得て情報を流すと決める。くじでクラレンスに決まった。ルディの懐に入ったと、クロスワードパズルを使ってモンテスに教える。ルディと行動を共にしていたために、警察はクラレンスが裏切ったと見るが、そうではない、これは僕たちの戦略だったとモンテスが上司を説得し、ルディを追い詰めるのだが、二人のキャラが屈託なさすぎ、刑事・犯罪モノとしてはコミカル過ぎて乗れません。おまけにミレーユ・バランが終盤、無視同様の扱い。これで盛り上がれと言っても無理ね。「肉体の冠」ではシモーヌ・シニョレに、女優の鑑みたいな演技をさせたことを思うと、本作はベッケルの鬼子ではないか▼モンテスとクラレンスは揃って首席で卒業となる。クラレンスはカトリーヌと関係を結ぶがその後発展はナシ、どころか勇んでルディを追跡するモンテスの後を追いかけ、彼女は置いてきぼりである。もし「望郷」を見たファンなら「カワイソー」と叫んだかもしれない。ジャン・ギャバンのペペル・モコを虜にしたパリジェンヌ、ギャビーがミレーユ・バランだった。ギャビーはアルジェに観光に来た金持ちの老紳士の愛人。パリそのものの香りを放つギャビー。じい様に飽き飽きしていたギャビーは危険な男ペペル・モコに痺れる。ミレーユ・バランは私生活でも社交界でも派手な存在だった。今でいうクール・ビューティの美貌で、ジャン・ギャバンと恋仲になった。続く「愛欲」でも共演。ファムファタールとビッチが似合った。本作は残念なほどのハズレだ。多くの男性と恋をし、ハリウッドにも渡ったがこれという作品はない。戦争を経て1945年、最後の映画出演。病気とアルコール依存症に苦しみパリ郊外で死去。53歳。本作で主役の二人の男優がむやみとはしゃいでいるのに比べ、その扱いに影を落としているのが、行く末を暗示していたようでやるせない。