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特集「フレンチ・ノワール」

2019年3月22日

特集「フレンチ・ノワール」⑧ 
レミー・コーション/毒の影(1953年 劇場未公開)

監督 ベルナール・ボルドリー

出演 エディ・コンスタンティーヌ

シネマ365日 No.2791

J・ボンド先取りか

特集「フレンチ・ノワール」

 舞台はカサブランカ。FBI捜査官レミー・コーション(エディ・コンスタンティーヌ)はパリ警察の要請を受けて、殺人事件とその裏に潜む金塊密輸の捜査のためカサブランカに飛ぶが、クラブで歌うカルロッタに一目惚れ。もちろん彼女には愛人がいるが再々忠告を受けても、レミーは美女には怖い男がつきまとって当たり前と、カエルの面になんとかだ。現地の新聞記者から情報を集め、クラブで先発FBI捜査官と落ち合うはずが、彼は殺されていた。カサブランカとはアフリカの最大都市にして最大の港をも持つ。何が起こってもおかしくない国際的犯罪都市である。レミーは殺人現場の証言者がイカサマだと見破り、彼に近づき、ついでにカルロッタの男性関係も洗う。カルロッタは別名「毒の影」というギャングの情婦だ▼フランス映画とハリウッドのチャンポンの筋書きが進むうち、どこかで見たことあるぞ、という気がしてきました。政府の特務機関として密命を帯び、単身危険地帯に乗り込む危険をものともしない余裕、ゴロツキも殺し屋も屁のカッパ、たいへん女好きで、頭がよくて洞察力に長け酒飲みである。おまけに主演のエディ・コンスタンティーヌがこの時36歳、どことなくショーン・コネリーに似ていたせいか、まるでジェームズ・ボンドのキャラ先取りだ。彼はバーではむろん、そこが犯罪者の巣窟であろうと、どこであろうと行く先々でウイスキーをチョイ飲み、訪問先では勝手にワインをグラスに注ぐ。依存症同様であるのに足元もふらつかせずアクションに臨む。ショーン・コネリーだって相手が勝手に倒れてくれるような、アクションらしいアクションではなかったし、今のトム・クルーズやシャーリーズ・セロンなんかに比べたら、お遊戯みたいなアクションよ。でもいい。そういう映画作りの時代だったのだから。しかしながらこのハリウッド的カサブランカものは、どうにもこうにも女に甘くできすぎているのだ。ヒロインのカルロッタはギャングの愛人ではあるものの、人生の裏街道に身を潜めて歩くのに疲れている。レミーが「愛している、愛している」と自分の顔を見るたび口説くのを鼻であしらっていたが、身を挺して救出に来るに及んで、「仕事はできるわ、度胸はいいわ、ハンサムだわ、酒は強いわ」目に映る彼の姿すべてが眩しく見えてくる▼彼女は「毒の影」という呼び名を持つファム・ファタールであったはずだ。どこに毒がある。カッコつかんなあ。フレンチ・ノワールはいつの間にかフレンチ・コメディの様相を帯びる。というのもエディ・コンスタンティーヌが人当たりのいい、口のうまい、女を誘惑するのが三度の飯より好きというキャラがあまりピッタリ板についているため、ファム・ファタールに必要な女優の毒性まで帳消しになってしまった。最後にチョコッと撃ち合いがあり、男女二人仲良く助け合って危機を切り抜けエンドとなった時は、これ以上悪い冗談を見なくてすむと思えてホッとした。ハリウッド風味フレンチ・ノワール番外編という希少種。