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特集「偏愛力」

2019年3月25日

特集「偏愛力6」③ 
ビリディアナ(1960年 社会派映画)

監督 ルイス・ブニュエル

出演 シルヴィア・ピナル/フェルナンド・レイ

シネマ365日 No.2794

ルイスおじさん 

特集「偏愛力6」

ルイス・ブニュエルの映画は面白い。彼の作品を見始めたのは後期に当たる「小間使の日記」「昼顔」「哀しみのトリスターナ」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」からで、なんちゅうイヤらしいおじさんだろうと思ったのが運の尽き。どんどん過去にさかのぼり「スサーナ」「昇天峠」「ロビンソン漂流記」そして「皆殺しの天使」とはまり込み、本作ではのけぞったわよ(笑)。反キリスト教色が強く教会の物議をかもす云々と言われるのだけど、ブニュエルの映画が面白いのは彼の主義や思想もさることながら、虚飾のない世界観、屈折しながらさらけ出される人間の真実味がモロ出しになるからで、作品の製作背景を何も知らなくて(知っていればなおいいけど)本作だけ見ても豊潤な映画の魅力に引きずり込まれるにちがいない▼敬虔な修道女ビリディアナ(シルヴィア・ピナル)が学費・生活費一切の面倒を見てきてくれた叔父の、たっての願いで帰省する。叔父は亡くなった叔母の夫、つまり血のつながりはない。叔父になるのがブニュエル組の常連フェルナンド・レイだ。ビリディアナが亡き妻に生き写しというのは体のいい言い訳で、美しいビリディアナにのぼせ結婚してくれとなる。睡眠薬を飲ませ眠っているうちにけしからぬ振る舞いに及ぼうとするが未遂に終わる。自己嫌悪に陥り叔父は首を吊る。ビリディアナは罪悪感にかられ、贖罪のため屋敷に残って恵まれない貧しい人々のため尽くそうと決める。で、病人やら寡婦、体の不自由な男、仕事も家もない生活難民を屋敷に引き取り、朝夕神のしもべであるべき道を説く。彼らはビリディアナを天使と崇める。叔父の隠し子ホルヘが戻り、荒れた農地を整備し、作物を実らせ、屋敷を改造しビリディアナに関心を持つ。彼の愛人は嫉妬して出て行った。息子とビリディアナと長年務める家政婦が所用で町に出かけた後、浮浪人たちは地金を現すのだ▼「なんだって働くのだい。誰も見ていやしないよ」。屋敷に侵入し、銀の食器、レースのクロス、子羊の丸焼き、上等のワインは飲み放題。うち食らい、うち飲み、ソファの陰でゴニョゴニョに及ぶわ、仲間うちで蔑み合うわ、部屋は落花狼藉で足の踏み場もなくなる。そこへ主人ら3人が帰宅。図々しく居残った二人が一人はビリディアナを押し倒す。一人はホルヘを押さえつける。でもビリディアナを押さえつけている「お前の仲間を殺したら大金をやる」というホルヘの言葉に、アッケラカンと殺人に及ぶ。家政婦が警察を呼び一件落着。神の教えなど馬耳東風、食物と屋根のある家に住めたらどんな真似事だってするさ…という連中なのだ▼ビリディアナは絶望した? とんでもない、ブニュエルの映画にそんなヤワな女は一人もいません。世間の正体を見たってことよ、ケッ…みればホルヘと家政婦は静かになった部屋でポーカーに興じているじゃないの(彼らはとっくにできている)。ビリディアナは派手な服に着替えカードの仲間に入る。極妻も顔負けの根性だ。これでないとゴロツキ相手に神の道なんか説けない。腹の据わったビリディアナが爽快。思わず笑ったシーンがあります。叔父さんが亡き妻のヒールを履く。ごつい足をぎゅうぎゅう靴に突っ込む。ビリディアナが黒い靴下を脱ぐところを覗き見する。監督は舐めるように女優の脚を映していきます。脚フェチのブニュエルの面目躍如。「哀しみのトリスターナ」でドヌーブが切断するのは脚。腕や指にブニュエルは興味なし。ジャンヌ・モローがお気に入りだったのは彼女の脚にときめいたから。ジャンヌはそんなブニュエルが大好きで「ルイスおじさん」と呼んでいました。