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特集「偏愛力」

2019年3月27日

特集「偏愛力6」⑤ 
ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷(上)(2018年 事実に基づく映画)

監督 スピエリッグ兄弟

出演 ヘレン・ミレン/ジェイソン・クラーク/サラ・スヌーク

シネマ365日 No.2796

悪霊よりヘレンが怖い 

特集「偏愛力6」

 映画評では不評が多かったけど、私はとてもよかったわ。もともとスピエリッグ兄弟が好きだからね。彼らの「プリデスティネーション」も、ストーリーは一見ややこしいけど、ひっかけてやろうという意地悪さより、素直に作ってあると思えたし。本作なんか直球ド真ん中よ。妖気を漂わせて登場するヘレン・ミレンを、家族を守る一途なおばあちゃんに落とし込んだところなんか、ほのぼのとさえしていたわ。怖がらせるのはホラーの王道だとしても、それだけに終わらず1906年代の時代や、「西部を征服した銃」ウィンチェスター「その後」を丁寧に描きこんだところがうまかった。銃には善も悪もなくそれを使う人間次第で悲劇を生み出す。サラ(ヘレン・ミレン)はそれがよくわかっていて、ウィンチェスターによって命を落とした人々への贖罪を背負っています▼サラはウィンチェスター社の最大株主であるとともに、部屋数600室もの屋敷を網羅する通信装置を開発する発明家であり、理性的な女性だけれど問題を抱えていた。自らの会社が世に送り出したライフルで殺された人々の魂を重く受け止め、責任を感じ、霊たちが安らかに眠れる場所を造ろうとした。感情豊かなサラは霊の存在を感じることができる。屋敷を増築し巨大迷路のような建築が出来上がっているのは「彼らが造らせるの。ライフルで殺された霊が私を導くのよ。彼らは真夜中の鐘が鳴ると騒ぎ出す。彼らの死んだ部屋を再現すればそこに来る。そして私と話をするの。深い反省を示して彼らの悲しみと怒りを解放すれば天国に行く。好意的でない霊は部屋に閉じ込める。13本の釘で部屋を封印して、平安を見出したら解放してあげる。13とは神聖な数字で輪廻転生を守るの。安らげない魂は純粋な魂を食い物にするのよ」。彼女の孫息子ヘンリーはたちの悪い霊にとりつかれている。「先生の協力があれば霊に平安を与えられる」先生とは、屋敷に送り込まれた精神科医プライス(ジェイソン・クラーク)だ▼ウィンチェスター社は、36524時間大工が作業し、部屋が増え続ける屋敷の構築など、通常の人間のすることではない、もちろん霊の存在など信じない重役たちは、サラを退陣させたい。精神鑑定して「異常であると判定してほしい」とプライスを送り込んだのだ。屋敷に到着したプライスはサラの姪マリオン(サラ・スヌーク)に会う。「叔母は特別な女性よ。敬意を払うべき人物だわ」と前置きし屋敷の主だった部屋を案内する。「釘なしで建てた大舞踏室。壁と床は寄木細工。シャンデリアはドイツ製」当時ヨーロッパから取り寄せるなど、サラの美意識と財力を充分に示す。「叔母は夕食の席に現れます。嗅覚が鋭いから夕食前の飲酒は禁止。この家では叔母のルールに従ってください」そして「叔母は異常ではないと診断して」。くどくど書いたのは、この映画に伴う品位のようなものが映像化されているからです。例えばこの人、ヘレン・ミレン。ホラー映画初出演です。夫と娘を亡くして以来サラはずっと喪服。使用人達に会釈しながら晩餐の席に着き黒いレースのベールをとる。言っちゃなんですが、屋敷に住み着く悪霊どもより彼女の方が「らしい」気がするシャープな存在感です。