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特集「偏愛力」

2019年3月30日

特集「偏愛力6」⑧ 
死霊館のシスター(上)(2018年 ホラー映画)

監督 コリン・ハーディ

出演 タイッサ・ファーミガ/デミアン・ビチル/ボニー・アーロンズ

シネマ365日 No.2799

ヴァラク再誕 

特集「偏愛力6」

死霊館エンフィールド事件」の前日譚です。「エンフィールド…」は事実に基づく映画でしたが、本作は遡って、なぜ悪魔ヴァラクがこの世に姿を現し、一度は封印され、再び出現したか、を物語にしたフィクションです。1952年ルーマニアの奥地ビエルタン村に、バンク神父(デミアン・ビチル)が派遣される。村の修道院で尼僧が自殺した、修道院におかしなことが起こったのかどうか、調べてくるようにというバチカンの指示だ。彼らが「おかしなこと」というのは悪魔祓いが必要かどうかと同義語。バンク神父はそのエキスパートで、悪魔が憑依した人たちを祓ってきたが、ある時少年を死なせてしまい、深いトラウマを負った。しぶしぶ引き受ける。同行者は修道女見習いのアイリーン(タイッサ・ファーミガ)。アーカイブ・フィルムで「エンフィールド…」のヴェラ・ファーミガが映ります。実姉です▼道案内の村の青年フレンチーは自殺した修道女の発見者だ。死体は食物の冷凍室に保管した。暗い冷たい黴くさい、クモの巣を張り巡らした冷凍室にきた青年は「寝かせておいた遺体が座っている」のっけから不穏。ホラーの掟として、地獄・死体・墓場・呪い・暗闇・秘密の過去・色は黒・正体不明の人物・第二の殺人・夜中の物音・廊下をかすめる人影(ほぼ瞬間移動する)など、考古学的なまでに律儀に抑えられています。例えば修道院を取り巻く墓地の十字架(悪魔を閉じ込めるためだそうです)、登場する修道院長は黒いベールをかぶり顔がわからない。異様に低い声で話し、かなりの年齢のはずなのにササッと音もなく歩く。青年フレッチーがバンク神父とアイリーンを残して村に帰る帰途、端に輪を作った太いロープを引きずった物の怪が夜陰を跳梁する。酒場では村人たちが「12歳の子供が納屋で首を吊った。アディの畑の作物は枯れ、幼いステファンは盲目になった。みな修道院のせいだ。悪魔が棲みついて村に災いをもたらしている」。そんな恐ろしいなら燃やせばいいものを誰も恐れて近づかない。修道院は秘密と怪奇の要塞のごとく森の中に優雅にそびえる。とても洗練されたゴシック・ホラーであることが、一連の「死霊館」シリーズの隠れた人気の要因と思えます▼登場人物は悪魔と尼僧以外はわずか3人です。アイリーンに神父に青年フレンチー。尼僧オアナの語る修道院の歴史に、悪魔をこの世に呼び戻した原因がありました。蘇った悪魔がすなわちヴァラク。冒涜・地獄の侯爵・蛇どもの首領。悪魔学によればヴァラクは知能の高い、30の軍団を率いる悪のリーダーです。悪魔界の序列62番目というのはかなり優秀らしい。召喚者の前に、ふつう頭を二つ持ったドラゴンにまたがった、天使の翼を持つ少年の姿で現れます。尼僧が語るには「修道院の建物は、中世の暗黒時代にある公爵が建てた城です。彼は悪魔を呼び出すため魔術と儀式を繰り返した。地獄の使者となった彼は悪魔をこの世に送り込む扉を開けた(五角形の星型が刻印された床の扉がそれらしい)。開ける寸前教会が踏み込んで聖遺物(キリストの血)で扉を閉めた。教会は城を占拠し悪魔を閉じ込めるために礼拝を始めた。何世紀も悪魔は出てこられなかった。でも戦争で爆撃に会い、扉が開いて悪魔が再び動き出した」。アイリーンと神父は、ならばもう一度悪魔を封印せねばと決心する。青年は足元の明るいうちにトンズラを決めた。どっちもえらいわよ(笑)