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特集「ベストコレクション」

2019年4月5日

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」⑤ 
女神よ、銃を撃て(下)(2017年 劇場未公開)

監督 ティエリー・クリファ

出演 カトリーヌ・ドヌーブ/ダイアン・クルーガー/ネクフ

シネマ365日 No.2805

ヒーローは年齢不問 

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」

 ティエリー・クリファ監督は「輝ける女たち」でもドヌーブと組んでいます。女性監督のもとでドヌーブはいい作品を撮っています。ジュリー・ロペス・クルヴァルの「隠された日記 母たち、娘たち」やエマニュエル・ベルコの「太陽の目覚め」も佳品でした。本作はジャンルとすればサスペンスとか、フレンチ・ノワールに入るでしょうが、むしろドヌーブの一連の「母もの」としたほうがしっくりくると思えます。ルイーズという母親は、ベンが若い父親で娘を可愛がっているとわかり、彼が車に忘れていった財布をわざわざ届けてやる。ルイーズから見ると早くまっとうな仕事に就けばいいものを、あたら若い時代を無駄に消費しているおぼつかなげな青年だ。ベンはルイーズがしっかり者の、頼り甲斐のある女性だとわかり(頼られたほうはいい迷惑だが)、ギャングのボスに「金の出処はどこだ、誰だ」と脅されても口を割らない。彼は彼でルイーズ母娘をかばうようになった▼ボスはルイーズの家を見つけ出す。ベンの友だちであるカリムがベンを売ったのです。ルイーズとジュリアとベンは3人でギャングの襲撃に備える。ライフルを構えボス一味を追い払ったのはルイーズだ。隠れていたベンは「よくやった。ありがとう。あんたに会ったとき幸運の女神だと思った」と調子のいいことを言う。クズ男たちにいいようにされるジュリアも切ない。何が気にいらないのか母親に打ち解けようとせず、尻を持ち込むのは金の無心か男の後始末だ。「私はママほど強くない」と言いながらメソメソ泣く。ルイーズは夫に続いて娘まで刑務所に入れたくなかったのだが、この有様ではやはり病院に入れたほうがいいと判断する。ベンはかくまわれていたルイーズ宅を出ていく際、手紙を一通書き、母親に預けた。ベンはボスに拘禁され拷問を受けるがゲロしないまま殺されてしまった。警察がやってきて「ベンは殺人犯だった」といって彼の手紙を見せる。「この手紙は俺の罪の告白だ。ロドルフの死について嘘をついた。でもいつか逮捕される。ロドルフを殺す気などなかった」彼はジュリアの罪をかぶって死んだのね。ひいてはそれがルイーズの救いになるとわかっていたから。ルイーズの周りに神経の細い弱々しい娘や、金も力もない男が寄ってきているのは、監督がそういう女を描きたかったからでしょう。ドヌーブは、情があって腹がすわり仕事は有能で経済力があり、娘を愛し、血痕をザブザブ洗って腹が減り、ローストか何かにかぶりつく生命力旺盛なヒーローなのである。ドヌーブは本作のとき74歳だった。女性作家が男性作家に比べ、例えば谷崎純一郎や川端康成が、老年の性と老醜を平気で扱っているのに比し、女性の老年を書くことが少ないのは多分、女の老いは男に比べ醜いという女性自身の刷り込みに縛られているからではないか。ドヌーブやシャーロット・ランプリングや、はたまたメリル・ストリープらを見ていると、意識はもっと変わっていい。