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特集「ベストコレクション」

2019年4月9日

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」⑨ 
パーティで女の子に話しかけるには(2018年 ファンタジー映画)

監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル

出演 エル・ファニング/ニコール・キッドマン/アレックス・シャープ

シネマ365日 No.2809

パンクという情念 

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」

 1977年エリザベス女王の戴冠25周年を祝うロンドンの片隅の空き家で、高校生のエン(アレックス・シャープ)は「旅行者」と名乗る奇妙な一団に出会い、少女のザン(エル・ファニング)と恋に落ちる。彼らをカルト集団だと思ったエンと友だちは大騒動する。彼らが地球外から来た異星人だとわかる。ザンの属する第4コロニーでは「個性を尊重する」がポリシーだ。地球から退去まで48時間のうちに、この星の個性尊重がどうも「パンク」らしいと見当をつけたザンは、エンに「パンクを教えて」と頼む。ニコール・キッドマンがパンクのカリスマボディシーアで登場します。狂って弾けた映画ですけど、今から1970年代を思うと、スマホもなかった、ググルもできなかった、セクシュアリティは抑圧が強く、頭上の重しをはねのけたい衝動が地雷のように、社会のここかしこに埋まっていました▼ジョン・キャメロン・ミッチェル監督は「ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ」の監督です。本作にもやはり画一社会の中で人を救うのは愛であり、恋であり、それによってリスクを負いながらも自分とは異なる存在に気づいていくべきだというメッセージが込められています。監督は「パンクとは抑圧する権威に対して問いかけること」とインタビューで答えています。これ以上いうことはないのですが、エンとザンの恋がありきたりに成就せず、ザンが母星に戻った「その後」がとてもヒューマンです。数年後、ミュージシャンとなったエンは不思議なグループに出会う。「母の指示で引っ越してきた」という彼らはそれぞれ名乗り、中にエンという男の子がいた。そう、ザンは男の子を産み父親と同じ名をつけていました。エンは胸キュン。ファンタジーとコメディと70年代のUKポップカルチャーが渾然一体、無茶苦茶だけどエネルギーに溢れた作品になっています▼この時代から現代を振り返れば、情報社会どっぷりの私たちが、スマホと検索万能で失ったものがよくわかる。デジタルカルチャーの対極にあるのがポップカルチャーだと監督は位置付けています。情報の麻痺状態に陥って、与えられることに慣れ、自分がクリエイトする手仕事や職業や、モノづくりを回避し、SNSで簡単に自分を商品化する。今の若い人たちが、忍耐が足りないと指摘するのは間違いだと思えます。忍耐するヒマもなく次々、新しい情報が押し寄せ、集中力はもちろん、自分で下す判断力と選択力を押し流してしまうからではないですか。本作の言う「パンク」とは「クリエイト」と同義語です。どうしようもないエネルギーであり、持続する志であり、漫然とした「愛のようなもの」に、妥協しない情念であり真摯な生き方であり表現です。映画では異星人たちに「俺たちは傲慢にも自分たちが唯一無二の存在だと思い込み、戦争で人口を減らし自然を破壊し、衰弱した星にしてしまった」なんて言わせていますが、これ、地球でなくてなんでしょう(笑)。