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特集「ベストコレクション」

2019年4月10日

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」⑩ 
チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(2018年 社会派映画)

監督 ジャスティン・チャドウィック

出演 アリシア・ヴィキャンデル/クリストフ・ヴァルツ/ジュディ・デンチ/デイン・デハーン

シネマ365日 No.2810

またしてもC・ヴァルツ 

特集「桜貝見つけた/4月のベストコレクション」

 登場人物がすべて、日常次元に引き摺り下ろされてしまうのが小気味よかった。愛よりも恋よりもまず生活できること、そのためには「結婚は安全な港よ」。修道院長(ジュディ・デンチ)に諭され、ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)は年の離れた裕福な商人コルネリス(クリストフ・ヴァルツ)と結婚する。ソフィアの「犠牲のおかげで妹たちは米国のニューアムステルダムで叔母と暮らせることになった」。ナレーションはコルネリス家のメイド、マリアだ。亡き先妻との間にできた子供を失っている夫は毎晩積極的である。3年たったが授からない。「あと半年待ってできなければ修道院に送りかえそう」。時代は1634年のアムステルダム。チューリップが投機の対象となり、はるか東から来た美しい花の球根を、人々は我を忘れて手に入れようとした▼夫が夫婦の肖像画を描かせるために呼んだ若い画家ヤン(デイン・デハーン)とソフィアはたちまち夢中になる。二人は狂奔する。暇を見ては密会を重ねる。出入りの魚屋とマリアは恋仲だが、密会に急ぐソフィの後ろ姿を魚屋はマリアと見間違え、失恋の痛手で海軍に入ってしまう。マリアは妊娠していた。ソフィは一計を案じ、マリアの子を産ませ屋敷で育てることにした。マリアは母子一緒に暮らせるし、自分は(あとでわかるが)お産で死んだことにして画家と駆け落ちするのだ。コルネリスが求めるのは子産み女、ソフィアは恋にのぼせ貧乏画家と「安全な港」をでようと夫を騙す。画家は女との逃走資金を稼ぐため、チューリップの投機に手を出し大損。マリアは身の保全のためにソフィアの不倫をネタに脅迫する。このあたりまで、全然気分のいい映画ではありません。棺桶に入って屋敷を出たソフィアは気が変わって元の家に戻ろうとするが、窓から娘を抱いてやさしく頬ずりする夫を見て、自分の罪の大きさに気づき、ヤンに「熱は冷めた」と伝言を残して行方をくらます▼8年後、夫はマリアに手紙を書いている。「ここはお前に残す。新たな生命で家を満たせ。私の名前と資産は守ってほしい。その子は私の後継だから。このことを知るのは私とウィレム(魚屋=海軍から戻ってマリアと結婚した)。秘密を守り幸せに暮らせ。さらば」そしてインドに去った。彼はインドで新しい家族を得た。政府はチューリップの取引を禁止した。ヤンは修道院の壁画を頼まれ足場の上で仕事をしていた。修道女が並んで入ってきた。一人が顔を上げるとソフィアだった。目と目で微笑みを交わす。院長のシタリ顔が気になるがあとは知らない、どうでもなってくれとして前に進むだけ。みな収まるところに収まったのだからよしとしよう、そういう映画なのですね。マリアもソフィアもしたたかで、ちゃんと生きる場所をつかみとっている。コルネリスだけが泣かせる。彼は心から妻を愛するようになり「もしもの時は子供を諦める。妻の命を助けてくれ」と医者にすがる。聞こえていたソフィアは目を閉じたまま涙を流す。アリシア・ヴィキャンデルは美しい、ジュディ・デンチは貫禄だ、デイン・デハーンも不足はありません。でもクリストフ・ヴァルツが出演するといっぺんに影が薄くなる。彼はキャサリン・ヘプバーン男子版です。あいつが出たら賞は取られる、シーンは食われる、いいところはみな持っていかれるから絶対共演しない、そう言われる日は遠くない。