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特集「B級映画に愛をこめて」

2019年4月12日

特集「B級映画に愛を込めて11」② 
チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(2012年 劇場未公開)

監督 ショーン・ベイカー

出演 ドリー・ヘミングウェイ/ベセドカ・ジョンソン

シネマ365日 No.2812

力みのないやさしさ 

特集「B級映画に愛を込めて11」

 「フロリダ・プロジェクト」「タンジェリン」のショーン・ベイカー監督のデビュー作、ということで見たのですけど。チワワと秘密に何の関係もないひどい邦題ですが、ポルノ女優とか、高齢の女性独身者とか、社会のマイノリティを主役にする軸足は変わりません。ジェーン(ドリー・ヘミングウェイ)が、ガレージセールでたまたま買った魔法瓶に、輪ゴムで丸めた束がいくつも入っていて、数えたら1万ドル。驚いて返しに行くが売主の老婦人セイディ(ベセドカ・ジョンソン)は、クレーマーだと勘違いして玄関払いする。大金を着服するのも気がとがめるジェーンは、婦人の家を見張り、偶然を装って声をかけるが、セイディは詐欺師だと思い込み催涙スプレーで追い払い警察を呼ぶ。次の日「あなたは詐欺師じゃなかったのね。純粋に親切だったのね」とセイディから謝罪の電話が入る▼人嫌いのセイディは、いつもチワワを連れたジェーンが、家に上がってジロジロ眺めまわし「いい家ね」とか「私は射手座よ。人付き合いがいいの」聞きもしないことを喋り「あなたはきっと魚座ね。繊細そうだし、無口だし」セイディは勝手に喋らせておくが、どこかウマが合うらしく追い出さない。ジェーンはセイディの夫フランクの墓参りやスーパーの買い物を手伝ってあげる。1万ドルは赤いブーツの中に隠した。セイディはギャンブラーだった夫が「使い切れないほどお金を残してくれた」から生活に困らない、子供はいない。ジェーンの同居人のメリッサもポルノ女優だ。同業者の彼氏はヒモ同然。大金を拾ったらどうするとメリッサに聞くと「相手次第ね。困っている人だったら返す。困っていなかったらそのままにする。大事な人のために使えばいい」というからそのままにしておいた。ジェーンの留守中、部屋をうろついたチワワが1万ドルの束で遊んでいた。メリッサは隠し金を見つけるが、盗むことはしなかった。しかしジェーンがセイディとパリに1週間一緒に行くと聞いて「親友でしょ。私のために使ってよ。あのババアの金でしょ」と怒りまくる。妙な理屈だけど▼そしてセイディの家に行って「ジェーンが親切な理由はあなたのお金を盗んだからよ。もうすぐ死ぬ人への哀れみかと思ったけど、罪悪感からよ。あなたの友だちじゃないわ。真実を伝えたかったの」とんでもない性格ブスだな。セイディはでもパリに行くと決める。ジェーンはいいやつだ…告げ口に来る女より、85歳になるまで人を見てきた自分のカンを信じたのだ。空港に向かう車を途中で止めさせ、夫の墓に花を供えてきてくれとセイディが頼む。墓石に来たジェーンは「フランク・パーキンス  献身的な父親」の隣に「サラ・パーキンス 愛すべき娘」が並んでいるのを見る。子供はいないのではなく亡くしていたのだ。セイディは18歳で死んだ娘の面影をジェーンに見ていたのかもしれない。ジェーンが仕事は、ときかれ「派遣業みたいなものよ」とお茶を濁すところに引け目が出ていました。まあ、こんな「ポルノ女優」なら誰も放っておかないでしょうけどね。若い女性が老婦人に出会い、人生の見方や生き方を変えていく佳品に、ブリジット・フォンダとジェシカ・タンディの「カミーラ/あなたといた夏」がありました。ドリーはヘミングウェイの曾孫。母親はマリエル・ヘミングウェイ、その妹(つまりドリーの叔母)がマーゴ・ヘミングウェイ。姉妹が共演した復讐映画に「リップスティック」。ドリーのキャラと、ショーン・ベイカー監督の力みのないマイノリティへの視線がいいです。