女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「B級映画に愛をこめて」

2019年4月13日

特集「B級映画に愛を込めて11」③ 
インビジブル 暗殺の旋律を弾く女(2018年 サスペンス映画)

監督 アンソニー・バーン

出演 ナタリー・ドーマー/エミリー・ラタコウスキー

シネマ365日 No.2813

かきたてられる不安 

特集「B級映画に愛を込めて11」

 ソフィア(ナタリー・ドーマー)は目の不自由なピアニスト。同じアパートの上に住む女性、ベロニク(エミリー・ラタコウスキー)が墜落死する。直前にソフィアは部屋で争っているような声を聞いた。彼女とは挨拶をするくらいで親しい間柄ではない。ひょっとすると堂々たるB級映画になるのではないかという、いい雰囲気が立ち込めてスタートするのは、ひとえにナタリー・ドーマーの大きな綺麗な目が何も見えていないという巧みな演技にある、と思う。彼女は一人住まいのピアニスト。オーケストラの一員で、リハーサルが終わると部屋に帰る。きちんと整頓された清潔な室内。どこに何があるか、かすかな手探りで感じ当てる繊細な挙措振る舞いが美しい▼ベロニクの父親ラディチは、ボスニア戦争の亡命者と紛争犠牲者を救う団体のトップだ。しかし人権侵害について黒い疑惑がある。ベロニクは自殺と警察は断定したが、ミルス警部はしつこくソフィアに事情聴取でつきまとう。ある日ソフィアは初老の男と会う。彼は幼いソフィアを連れて亡命した育ての親であり、英国情報部に所属する。「ベロニクと関わったことでお前は危うくなった。ミルス警部は徹底的に調べ上げるだろう。お前は手を引け。ラディチはロシアが始末する」と、国際的な陰謀をほのめかす。ここから物語の中心は、実はソフィアの復讐であることが明らかになる。ボスニアの小村でソフィアの家族はラディチの指揮によって虐殺された。しかしまだその奥があって、ソフィアの母親はラディチにレイプされ、産み落とした娘がソフィアだった。だから姉妹はそれと知らずアパートの上と下で暮らしていた。ベロニクにはマークという恋人がいて、彼の子を妊娠していた。恋人には殺し屋の姉がいて、ラディチを狙っている。ラディチという男がとことんワルで、ボスニア戦争の犠牲者を救うどころか、彼こそ戦場で極悪非道を繰り返した男だった。ソフィアは復讐の一念で彼を狙い続ける▼警部はなぜソフィアがラディチを追い詰めたのか腑に落ちない。彼女が映っているビデオをなんどもチェックするうち、不審な行動に気づいた。ソフィアはある壁の前で立ち止まりじっと動かないのだ。何度も送り戻して壁に何があるのかを見た。チラシが貼ってある。そのチラシにはラディチの写真が写っている。ソフィアは目が見えたのだ! 確かに「全く見えないのか」ときかれ「明るいか、暗いかくらいはわかる」と答えるシーンはあったけど、それだけでチラシの顔は特定できないでしょう。ジャケ写詐欺だわ。マークの姉も殺され、育ての親も抹殺、ソフィアも生かしておけないと襲撃に来たラディチをマークが救いに入る。ラディチは窓から墜落し、地上のとんがった鉄柵の上に落ちて死んだ。変哲もない結末だけど、まあまあ最後まで引っ張っていく。ソフィアが目の見えているヒロインだとすると、本作はただの凡作でした。視覚をシャットアウトした世界に感情移入する私たちの不安が、実は最大の仕掛けですね。