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特集「B級映画に愛をこめて」

2019年4月22日

特集「B級映画に愛を込めて11」⑫ 
ヒューマン・ハンター(2018年 SF映画)

監督 ロブ・キング

出演 ニコラス・ケイジ/サラ・リンド

シネマ365日 No.2822

せめて父子で釣りを 

B級映画に愛を込めて11

 「ソイレント・グリーン」という映画がありました。チャールトン・ヘストンが殺人課の刑事で、事件を捜査しているうち、ソイレント社が製造販売している「ソイレント・グリーン」に行き着く。人口増によって地球は食糧難に陥り、新鮮な野菜も肉も食べられない、かろうじて市民は代用食のソイレント・グリーンで食いつないでいる。それは人間の死体が原料だった。アントニオ・バンデラスの「オートマタ」も佳品でした。放射能汚染により地球は砂漠化した死の星。人口は激減しハイテク企業がロボットを製造し汚染した危険地区での作業に当たらせる。バンデラスは知能を持つようになったロボットを調査するうち何の未来もない地球に絶望する。彼自身死が近い。最後に「もう一度海を見たい」と願う。「ディストピア パンドラの少女」は地球上に未知の細菌がはびこり、感染した人間は言語が喋れず、人肉嗜好となり殺しあって人間を食べる▼本作は経済破綻と気候変動により生産力が激減。人口淘汰のため国民を消去せねばならぬ。人民省と呼ばれる管理部門が、法律で定めた基準に生産力が達していない国民を「ニュー・エデン」に送り込む。そこは巨大なガス室施設であり、すでに700万人が殺されていた。人民省のエージェント、クロス(ニコラス・ケイジ)は今日も送還者の家に来ていた。レイチェル(サラ・リンド)とアダムという母と息子だ。国民は薄々「ニュー・エデン」の実体に感づいている。送り込まれた誰からも手紙の返事は来ないし会えたこともない。クロスは昇進を控えた優秀なエージェントだが、レイチェルにあって事情が変わる。彼の元カノはレイチェルの隣人。妊娠し生んだ子がアダム。レイチェルは元カノが子供を売ろうとしていることを知り、彼女の死後引き取って息子として育てる。つまりクロスはサラの家を訪問して初めて、自分の子と育ての女性を収容所送りにしようとしていることがわかる▼人民省からは追手が来て三人を殺そうとする。カナダへの逃亡の旅を続けながら、クロスは少年時代、美しかった湖での、釣りの思い出をアダムに語る。荒地、原野、無人地域の廃屋、寂れたガソリン・スタンド。スクリーンに映る光景はディストピアそのもので、ニコラス・ケイジは常に眉間にシワを寄せ、ますます顔を陰険にしています。サラ・リンドも終始笑顔なし。しかもカナダ国境間近で、クロスもレイチェルも射殺される。クロスはニュー・エデンの真実をビデオに収録していた。それがテレビで流され、市民蜂起。革命が起きる、ということでエンド。ニコラスが死んで退場、という筋書きって必要だったの? ジャンル分けすることに意味があるとは思えないけど、社会派でもないし、エンタメでもないし、全体が暗い陰鬱ムードで終始して主役はあっさり射殺。見せ場がなくてモヤモヤするのはしかし、観客側の、ファン側の言い分であって、ニコラス・ケイジにすれば、少数派に付いて貧乏くじを引くマイノリティ男、という彼の嗜好ならびに選択の基本線を保持しているところが立派。劇中一度くらい、父子で釣りをさせてやればよかったのに。