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特集「貴公子」

2019年5月1日

特集「貴公子」① ブノワ・マジメル1 
パリ、憎しみという名の罠(2017年 劇場未公開)

監督 オリヴィエ・マルシャル

出演 ブノワ・マジメル/ジェラール・ドパルデュー/ローラ・スメット

シネマ365日 No.2831

危険と悪の甘い芳香 

貴公子

 ブノワ・マジメルがフランス映画界の貴公子と呼ばれ始めたのは、いつ頃からだったかわからないのだけれど「ピアニスト」で(まあ、よく頑張ったわね〜)と思ったのを覚えています。ミヒャエル・ハネケが、一流のピアノストであり、かつ変態であるヒロインをイザベル・ユペールで撮った映画。ブノワはイザベルの恋人で登場しますが病的な彼女についていけなくなるノーマルなイケメンを演じました。ハネケが古狐ならイザベルは女狐、ブノワが二人に挟まれた白ウサギという戯画が浮かんだものです。彼は着実に役柄を広げ監督・共演者に恵まれ、今年(201945歳。陰影の濃い中年となり、「太陽のめざめ」ではカトリーヌ・ドヌーブと組んで、恵まれない少年たちの福祉厚生に当たる、過去があるおじさん役を好演、全然目立たない地味な役で、セザール賞助演男優賞に輝き、実力を知らしめました▼歌は世につれ、映画も世につれ、犯罪も世につれ。本作はあまりスクリーンで取り上げられなかった、珍しい犯罪を扱った映画です。冒頭でアントワヌ(ブノワ・マジメル)が税金を払えなくて頭を抱えている。辛いよな〜。妙に同感する。経営不振で借金2000万ユーロ。誰もお金を貸してくれない。いうのも彼と犬猿の仲である義父アロン(ジェラール・ドパルデュー)が関係先に手を回し「あいつに貸したら絶対返せない」と言いふらしたせいだ。アロンは娘婿の手腕のなさをバカにし、離婚させて縁を切りたい。妻子の間で侮辱する義父もさることながら、妻がパパ一辺倒で自分の味方をしないこともアントワヌの孤独を深める。彼は脱税に手を出す。本作は事実に基づいており「京都議定書締結後、二酸化炭素の排出削減のため、規制枠を売買する取引が開始された。2008年〜2009年に売上税を脱税する事件が多発、EU全域で被害額は50億ユーロ、フランスでは1518億ユーロに上がる」とエンドに字幕が出るのがそれ▼アントワヌはギャングの融資を受けてボロ儲けしますが、アブク銭身につかず。豪遊し派手に金を使い、金回りの良さに目をつけたギャングが脅しにかかる。一緒に会社を起こした仲間たちは殺され、行きがかりでアントワヌは義父を射殺。恋人は彼女を恨んだアントワヌの妻にボコボコにされる。理解しあえない妻だったかもしれないけど、本当に怒ったら女のほうが怖くて無慈悲だということは、知っておくべきだったかも。トバッチリを食ってギャングに息子が殺された母親は、復讐のためアントワヌを路上で射殺する。誰も救われない悲惨な結末です。ブノワ・マジメルは平和も安穏もない、歪んだ道に深入りしていく男、全然同情できない男をタフに演じます。貴公子と呼ばれた面影こそ薄れたかもしれませんが、危険と悪を甘く芳香させる一方で、幼い息子を愛する父親像もバシッと決めて、やはり「男は顔じゃない、若さだけでもない」と主張したくなる(女は、とも言いたいのですけど)▼恋人ノア役のローラ・スメットは父がジョニー・アリディ(「アイドルを探せ」)、母がナタリー・バイ(「たかが世界の終わり」)。あんまり喋らず、アンニュイを漂わすムードは母親譲りです。

 

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