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特集「貴公子」

2019年5月5日

特集「貴公子」⑤ ダリオ・アルジェント1
サスペリア2/紅い深淵(上)(1978年 ミステリー映画)

監督 ダリオ・アルジェント

出演 デヴィッド・ヘミングス/ダリア・ニコロディ

シネマ365日 No.2835

鮮血の貴公子 

貴公子

 ダリオ・アルジェントの「サスペリア」を「シネマ」本欄の特集「フリーク/変態の詩人たち2」で取りあげて以来彼のファンです。好きになった理由は①彼の顔②映画がよかったから。気色悪いようにも見えるあの顔のどこがよかったのかと訊かれると困るのですが、知性的で物静かな印象に惹かれ、作品を見たら実に詩的だった。「ホラーの貴公子」という呼称を、わたくし、密かにアレクサンドル・アジャ監督に奉っていますので、アルジェントは世間の通称である「鮮血の貴公子」を使わせていただきます。本作は「サスペリア」の続編でもなんでもありません。まったく個体の違う探偵劇です。それでも導入部から血に濡れた大型ナイフ、不気味な音楽(ゴブリンです)、男の刺殺体、白いソックスを履いた可愛い子供の足、とパズルのような組み合わせにゾクゾクする滑り出し▼アルジェントの映画ではむしろおとなしい部類に属するであろう、伝統の探偵映画「フーダニット」(who done it)=誰が犯行をやったか=です。とはいえそこはアルジェントのやることですから、お定まりの連続殺人、古い洋館(幽霊屋敷と呼ばれる)、キモイ人形、荒々しい殺人手口…斧で頭をカチ割り窓に首を突っ込ませ、割れたガラスの破片が喉を引き裂く、あるいは煮え滾る湯に顔を浸ける、石造りの暖炉の角に顔面を打ち当てる、などがあります。主人公はアメリカ人のピアニスト、マーク(デヴィッド・ヘミングス)と新聞記者のジャンナ(ダリア・ニコロディ)。若い男女二人が力を合わせて事件を解決していくのは、アガサ・クリスティの「トミーとタペンス」に似ています。デヴィッド・ヘミングスはミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」でブレイクしたイギリスの俳優、ダリア・ニコロディはスキッとした細身の美人で誰あろう、アルジェント夫人です。ついでに言うと(脱線してばかりですみません)二人の間にできた娘アーシア・ダルジェントは、日本贔屓の父が「日本にちなんだ名前を」と「アジア」とつけた。それが「アーシア」です。ダリアはオカルトに造詣が深く、「サスペリア」は彼女の企画でした。もう一人腰を抜かすようなイケメンが登場します。マークの友人、カルロのゲイのパートナー、マッシモ・リッチを演じたジェラルディン・フーパー。イケメンと書きましたけど、名前でわかるように女優です。美人と呼ぶよりアンドロイドのような美しさ。黒々としたアフロヘアに、たっぷりした部屋着をきて現れる。マークは飲んだくれのカロルにこんないい相手がつくはずはないとは信じず「部屋を間違えました」と帰ろうとするが、表札は紛れもなく「マッシモ・リッチ」である。アルジェント夫人といい、ジェラルディンといい、首が長く細く背が高く痩せている。鼻筋が通り…などという顔と体の造作云々より、一瞬の印象に混じり物がない。そういう女性がアルジェントのタイプなのだとよくわかります。横道はこれくらいで。本筋は、この項(下)に移ります。