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特集「貴公子」

2019年5月7日

特集「貴公子」⑦ ダリオ・アルジェント3
インフェルノ(1980)(1980年 ホラー映画)

監督 ダリオ・アルジェント

出演 アイリーン・ミラクル

シネマ365日 No.2837

ダリオのお化け屋敷

貴公子

 鮮血の貴公子3本目。何がうれしゅうて、ダリオ・アルジェントを立て続けに見るのか。チグハグでバカらしくて、人を愚弄しているのに悪意がない。彼の映画がホラーだというのはレッテル貼りであって、基本、コメディです。本作はダリオの魔女もの第二作目ですが、ハリウッドに招かれて作ったせいか、ものすごく幼稚になりましたが、ダリオの作品に通底する、子どものころ母親が読み聞かせてくれた「怖い昔話」的感覚は健在です。冒頭の「三母神」の古本からしてモロ昔話の雰囲気よ。母神たちは世界に災いをもたらす女たちで(やっぱり災いの元は女なのですね)、一番美しい涙の母はローマに、ため息の母はドイツのフライブルクに、最も残酷な暗黒の母はニューヨークにいる。ローザ(アイリーン・ミラクル)はハッ! このぼろアパートは甘酸っぱい不吉な匂いがするし、錬金術を研究していたヴァレリとかいうおじさんの建築した建物らしい▼ローズは秘密めいた地下室を探りに行く。水が溜まっています。ブローチを落とし、腕を伸ばしたが届かない。彼女はなんとズボズボ、着衣のまま水に入るのです。あんた、正気か。この地下水が異様に深く、ローズは五輪メダリストみたいに泳ぎまくる。たかが水たまりが(おかしいやろ)なんて疑問はダリオに通用しない。こう言うシーンが続出します。ローズの弟マークはローマで音楽理論を勉強している。姉から「大変なものを発見したからすぐ帰国して」と手紙が来る。前席に猫のような鋭い目をした女子学生がマークを注視。膝に白いシャム猫を抱いている。ペット同伴を許す大学がどこの国にある。ニューヨークではローズの部屋に何者かが侵入、窓枠にローズの頭を固定し、尖らせた窓ガラスをギロチンみたいにガシャンと落とす。マークがニューヨークに駆けつけると、アパートで出会った管理人は色鮮やかな生肉に包丁を入れている。まさかローズの…と思わせるが回答はなし。アパートの住人の伯爵夫人エリサ。ローズの行方を聞くが到着したばかりのマークには答えられない。廊下の血痕の後をエリサは指摘し、マークがそれを追ってエレベーターに行くと立ちくらみ。か弱い神経なのよ▼ローズが古本を買った書店カザニアンはアパートの隣だ。店主はアパートの管理人に「お宅の猫が店にきて困る。なんとかしないと通報するぞ」とクレームをつけ店に戻ると、大きな猫がのうのうとクッションで寝ている。彼はズタ袋に猫を押し込む。袋の中には何匹も猫が入っている。それを担いで川に行くとザンブとばかり袋を放り込み愉快そうに笑う。彼は松葉杖をついているが、泥水に足を取られ転倒した。どこからともなく無数のネズミが現れ、足を、手を、首をかじられる。猫を放り込まなかったらネズミは近づいてこなかったでしょうに。「助けてくれ」と悲鳴をあげたらホットドッグ屋が包丁を持って飛んでくるのね。ネズミを追い払うのかと思うとおじさんの首をザックリ。前後の脈絡のつかない出来事が次々。こういうところもページをめくったら別の話になるオトギ話ふう▼マークが天井裏を探っていると、下の部屋には車椅子の老人と看護師の女性が。老人と対面。奥の部屋にマークは呼ばれ自分はこの家を建てたヴァレリだと老人は言う。暗黒の母に聞かれるとまずいからこっちに来いと老人。そばによると注射器でブスリ、とやろうとする。マークも今度は貧血を起こさず老人を突き飛ばすと、皺だらけの首にコードが絡まる。マークが助けてあげると「わしは所詮三母神の召使い」と恨み言を残し死ぬ。始めから出てくるな。看護師さんはどこ? 部屋でテーブルに突っ伏していた。「逃げましょう」とマークが呼びかけるとスックを立ち上がり「お前の姉さんは私に会いたがっていた! 三母神とはイコール死に神なのだ!」と両手を広げると黒いマントのドクロ頭巾に一変。火の手が上がりアパートは炎上。マークは命からがら脱出した。ドクロの姉御? 焼け死ぬのよ、元々死んでいるのに。とてもお金をかけて作ったそうですが「二度とハリウッドでは撮らん!」とダリオは言ったとか。やりにくさににもかかわらず「お化け屋敷」を繰り広げたダリオの奮戦に一票。