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特集「貴公子」

2019年5月8日

特集「貴公子」⑧ ダリオ・アルジェント4
サスペリア・テルザ 最後の魔女(2009年 ホラー映画)

監督 ダリオ・アルジェント

出演 アーシア・アルジェント

シネマ365日 No.2838

手織りのホラー 

貴公子

 毒食らわば皿まで。乗りかかった舟です、ダリオ・アルジェント監督「魔女三部作」の総括「サスペリア・テルザ   最後の魔女」といきましょう! なんで(!)をつけたのか、自分でもよくわからんのですが、一種の感慨がありました。前作「インフェルノ」から27年、これだけは決着を取らねばと、ダリオの並々ならぬ決意で「魔女」の総仕上げに取り組んだに違いない。27年という長い年月にもかかわらず、ダリオ・チームの手仕事の技はそのまま、古道具屋からかき集めたような小道具にセット、間取りを無視した建物の内部、どぎついライティング、意味不明の魔女のケープ。これは「スガラムルディの魔女」の帽子と同じく、身に付けることによって魔女力を発揮するという伝家の宝刀なのですが、子供がお祭りに着る赤い半纏みたいで神秘性ゼロ。そのかわりこれまでのダリオ作品にはないグロさが満載です▼登場人物に魔女たちは嵐のごとく殺されるのだ。その手段が凄まじい。列車のドアに頭を挟まれガンガン開け閉めして潰される、これがなんと日本人の魔女だ。ヒロイン、サラ(アーシア・アルジェント)が、母親譲りの魔女力を持っていることを教える霊媒師マルタは、陰部から口まで長い棒で刺し貫かれ、彼女の恋人は両目を潰されるえげつない殺され方。血迷ったか、ダリオ! 魔女のよみがえりによってローマは狂ってしまう。市街は暴力と血にあふれ、集団暴行と殺戮が日常と化した…なんでこうなったかというと、墓地で発掘された遺品箱を調べるうち、それが「涙の母」と呼ばれる残酷な魔女の遺品であり、地上に掘り起こしてしまったことにより「涙の魔女」を蘇らせ、世界制覇を企む彼女は、世界中の魔女をローマに集結させ、人間の知恵や良心を払拭し悪夢の街に変えようというのだ。そのわりにはやることが企みや計略ではなく、出たとこ勝負の暴力沙汰というのがチープなのですけど▼サラが窮地に陥るたび、どこからか不思議な声が聞こえてきて助ける。彼女の母親は魔女の一人と戦って深手を負わせたものの、自分も殺された。娘を、そして人類を滅ぼそうとする涙軍団をやっつけねばならぬ。で、「お前を助けるのはこれが最後よ」と言いながらママ霊が何度も出てくるのは、しまいに「あ、また、お母さんが」なんて、まるでPTAの保護者同伴みたいでおかしいのだけど。ところがサラの周囲の人物がどんどん殺されていくのに、いつになったらサラは目覚めた能力を発揮するのだ。トロイのだ、このヒロインは(アーシア・アンジェルトはダリオの娘です、すみません)。刑事が殺人事件の容疑者としてサラを見張っているのだけど、いつの間にか恋人ふうに。と思うとマルタと恋人の無駄なベッドシーン。ダリオはすっかり魔女世界のサドと残酷にアディクトした。究極はウジムシならぬ腐乱死体の溶けたドロドロ沼。人を愚弄するにもホドがある。二度と見てやらん。その一方で2000年代とは思えぬ昔ながらの作り方が、おかしなノスタルジックをかもし、アナログの高揚感があるのだ。今時のマーベル大作ものでは絶対味わえない手織り感覚は、やはりダリオ・アルジェント独特の映画観と思える。