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特集「貴公子」

2019年5月9日

特集「貴公子」⑨ ローワン・アトキンス
ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲(2018年 コメディ映画)

監督 デヴィッド・カー

出演 ローワン・アトキンス/ベン・ミラー/エマ・トンプソン/オルガ・キュリレンコ

シネマ365日 No.2839

笑う? 笑わない? 

貴公子

 「貴公子」のトリは「笑いの貴公子」ローワン・アトキンスです。ジョニー・イングリッシュと相棒のボフ(ベン・ミラー)の傑作コメディ。エマ・トンプソンにオルガ・キュリレンコの共演という、ハナからヒットを見込んだ豪華脇役陣です。サイバー攻撃を受けて英国諜報機関MI7のエージェントの情報がチョンバレになった、サミットを目前に首相(エマ・トンプソン)はアタマにくる。現エージェントの正体は割れてしまったから、引退した古手のスパイしか使えない。「年寄りたちをかき集めて!」と首相は檄を飛ばす。小学校の地理の教師をしているジョニー(ローワン・アトキンス)にお呼びがかかった。ローワンを見ていると、彼の顔芸、というより折り目のついた体芸がバスター・キートンを思い出させる▼ジョニーの条件は「ボフと組むこと」で名コンビ復活。アナログのジョニーはハイテクにちっとも驚かない(トいうよりわからない)。支給品ツールである最高能力のスマホはメガピクセルがどうとか、ディスプレイがこうとかを説明され「素晴らしい。何を発射する。毒矢か」「?」ツイッター、インスタグラム、ウーバーは「設定ずみです」「何のことだ。私は銃が欲しい」。「車はどのハイブリッドを?」お蔵入り寸前の「アストン・マーティン。これがいい」「過去の遺物です。燃費は悪い。オイルは漏れる。ナビやチップもない」「つまり、相手にとっては見えざる敵だ」ジョニーは理屈をこね、ケータイをゴミ箱にポイ。真っ赤なアストン・マーティンでいざ出発。車内で指示した装備を点検する。パワード・スーツ、綿棒爆弾、瞬間ゴムボート、超高速スーパー精力剤、速攻睡眠薬。ゼリー爆弾。「ゼリーはゼリグナイトの略称だ。一瞬で頭が吹っ飛ぶ」大昔の007でもこんなクラシックな「グッズ」あったかしら。とにかくジョニーは上機嫌で目的地に向かった▼ジョニーが確かに笑わせてくれるのですが、笑いを引き起こすソースであるのが、彼の傲慢で独善的で協調性のなさというのが根底にあります。だから人のことなどお構いなしに仕事を進め、結果うまくいく(当然お話はそう設定されています)が、そうでない時はモロ重罪犯である。笑いでカモフラージュしていますが、ジョニーの素の顔はうまく社会に溶け込めない不適合者の要素が多分にあります。お笑いだからそんなこと関係ないと言われるかもしれませんが、お笑いだから毒がないとは言えないのです。特にイギリスのコメディの場合、一皮むくとブラックそのもので、すべての人にとって後味のいいものとは思えません。ジョニーに平気で暴力を振るわせたり、車椅子の高齢女性を路上に蹴り出したり、もっともドギツイと思えたのはラスト、大活躍を終えて小学校にもどったジョニーを子供達や校長が取り囲む。ジョニーはスパイの小道具で子供達を楽しませますが、校長が「お菓子もあるぞ。これはゼリーか」そう言って口に含んだ。一噛みで頭が吹っ飛ぶゼリー爆弾です。映画はここでエンド。ジョニーが止めるのか、校長の頭が爆発するのか、それは映りません。何に笑うかでその人がわかる、といったのは確かベルグソンでした。「みなさん、ここで笑う? 笑わない?」映画は意地悪くそう問いかけているようにも見えます。イギリスのジョークって、心底ブラックですよ。