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特集「ベリッシマ(美少女)」

2019年5月10日

特集「ベリッシマ(美少女)」①
エコール(2006年 ミステリー映画)

監督 ルシール・アザリロヴィック

出演 ベランジェール・オークレール/マリオン・コティヤール/エレーヌ・フジュロル

シネマ365日 No.2840

無茶苦茶で可哀想なお話 

特集「ベリッシマ(美少女)」

 「ミネハハ」を原作とした映画2本がありました。「ミネハハ 秘密の森の少女たち」劇場未公開でした。本作は2006年日本公開されています。前作はまだストーリーらしいものに見当がついたのですが、本作はさらに謎の純度が高くなっていて、キツネに鼻をつままれたようなエンドです。深い森の中で6歳から12歳までの女の子が5つの寮に分かれて集団生活をしている。ある日最年少の少女イリスが棺に入って入学(?)する。先輩の少女たちが校則を教える。年齢ごとにリボンが色分けしてあり、6歳は赤、12歳は紫。紫になれば卒業する。勉強は森の自然と種の進化、ダンスだ。生物の先生がエディス(エレーヌ・フジュロル)、ダンスがエヴァ(マリオン・コティヤール)。紫リボンのビアンカ(ベランジェール・オーブルージュ)が、親切にイリスを指導する▼いちばん重い校則は「森から出ないこと」。脱走を試みた生徒は罰則として死ぬまで学校から出られない。子供たちの身の回りの世話をする老齢の女性たちも、二人の先生も理由はわからないが同じ運命らしい。午後9時になるとビアンカは寮を後にして森の小道の奥に入っていき夜更けに帰る。何しに行くのか少女たちは知っている。青リボン組は年に一度校長の審査するダンスの発表会があり、選ばれると外に出られる。アリスが懸命に練習するのは学校から出たいからだ。しかしこの少女らに両親や家庭の記憶はないのか。誰もその話題に触れない。イリスが訊ねてもビアンカは「ここが私たちの家よ」と答えるばかり。二人の少女が脱出を図る。赤リボンのローラと、選外になったために希望を砕かれたアリスだ。ボートに乗って漕ぎ出したローラは溺死。高い塀(学校は塀で囲まれている)を乗り越えたアリスは行方不明。美少女たちの毎日は勉強し、水泳し、踊り、行儀よく食事して眠りにつく。深い森。ビアンカたちが夜出かけていく場所は小さな劇場になっていて、観客席があり、少女たちの踊りを見る。彼らはお金を払い、その収益で学校は成り立っていると古いメイドが教える▼ビアンカと他の少女が卒業する。劇場の出口は地下通路になり、トンネルを歩いて箱みたいな列車に乗り、着いた駅(らしい場所)に降りると、目の前は広い大学みたいな建物で、イケメンの男子がいる。初めて見る光景にビアンカたちは戸惑っていたが、目の前で水を噴き上げる巨大な噴水に浸かり、はしゃいでいたら、青年が近づいてきた。エンド。ワケわからないのは私だけじゃないと思うけど、あっちこっちの断片をつなぎあわせて憶測すると、校長が執拗に青リボン組の少女一人ひとりに「首を見せて。少し短いわね」「顎を上げて。綺麗な頸(うなじ)ね」「手を見せて」「歯を見せて」「回って」と点検するのは品定め以外の何物でもないし、毎夜の観客も、少女売春ではないとしても、将来何らかの商業目的もなく、金を払って通ってくるだろうか▼自分たちを待ち受ける「外の世界」が虹色でないとビアンカは気づいている。だから「ここにいたい」と希望するのだが、もちろん聞き入れてもらえない。ひどい学校だ。棺桶に娘を入れて送り出すなんて、親は娘が死んだものとして縁を切ったということか。この時点で森の学校(エコール)に、以後娘の身の上に何が起ころうと一切口は挟みません、万事お任せしますという契約書でも交わし、娘を譲り渡したのか。学校は美少女たちを純粋培養し「服従することが幸福への道」と洗脳する。自我の強い子が反抗すると事故に遭う。そのくせ簡単に外界に放り出す。自然観察やダンスだけの学習だから、十分な基本知識があるとは思えない。中途半端な卒業は、夜な夜な観察に来ていた観客たちが引き取り手だと決まっているからではないか。美しい映像は偽善の隠れ蓑だろう。だからエヴァは少女たちの運命を思って涙ぐむ。ビアンカが「私たち、どうなるの」という問いに「学校のことも私のこともすぐ忘れるわ」と答え、列車の中でスパ〜とタバコをふかす。語るに語れぬ影のある女性という雰囲気バッチリ。マリオン・コティヤールのエロタード、もとい、レオタード姿が場違いなほどなまめかしい。これで彼女の過去に何もなかったと考えろというほうが無理だし、この美しさがエコールで朽ち果てていくとは残酷以外にない。エコールとは森の中に潜む自由の墓か。ひたすら無茶苦茶でかわいそうね、この子ら。