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特集「ベリッシマ(美少女)」

2019年5月16日

特集「ベリッシマ(美少女)」⑦
テス(1980年 文芸映画)

監督 ロマン・ポランスキー

出演 ナスターシャ・キンスキー

シネマ365日 No.2846

君は稀に見る美貌 

特集「ベリッシマ(美少女)」

 テス(ナスターシャ・キンスキー)はしっかりした少女。貧農の娘ですが、古い家系図を見た牧師が貴族の一族だと教えたものだから、会いに行って親類だと言えば縁につながりテスの嫁入りにも役立つと両親はふみ、遠路はるばるテスをダーバビル家に向かわせる。息子アレックはテスの美貌に目を奪われレイプ、彼が嫌いでたまらなかったテスは暇乞いをして田舎道をとぼとぼ歩いて家に帰る。馬で追ってきたアレックは「こそこそ逃げるな。誰も止めはせん。戻る気なら戻れ。君の美しさは誰にも負けない。賢く生きればよい。人生はもっと明るくなる。僕は悪い男さ。まともに死ねないだろう(的中する)、問題が起きたら手紙をくれ。すぐなんとかする」。本作にはもうひとりエンジェルという男がテスに求婚します。どっちもテスが幸せになれない男だったのだけど、どっちかというと、私、アレックのほうが好きね▼彼は100%テスに上から目線なのだけど、エンジェルと結婚し、夫が蒸発したテスを探しあてた。「なぜ子供のことを黙っていた。知っていれば責任を果たした。夫はどうした。君を棄てるなんて。行こう」それでも言うことを聞かないテスに「頑固も度を過ぎたら愚かだぞ」エンジェルは牧師の息子で裕福な家の跡取り。テスがアレックとの間にできた子供をすぐになくした、そしてまた働き始めエンジェルに出会った、そのいきさつを打ち明けると「僕が愛したのは別の女だ。この苦痛を克服できた時迎えに来る」と言ってブラジルに行っちゃう。それもタダではいかない。幼馴染のイズに「一緒に来てくれと言ったらブラジルに来てくれるか」なんて後釜を当て込んでいるのね。ブラジルで事業はうまくいかず、帰国してやり直そう…テスの居場所を突き止めたら、とっくにアレックと一緒に暮らしていた。テスはエンジェルにこんな手紙を書いている「あなたは冷酷です。返事は一通も来ない。不当な仕打ちを受けました。あなたを忘れます」。訪問に来たエンジェルを追い返し、朝食のテーブルに突っ伏して泣いているテス。アレック「どうした、テス。ウツにでもなったか。悪い夢だろ。ブラジル(エンジェルのこと)が来たのか」歯牙にもかけず「昼はベネット家と昼食会だ。礼儀正しくしろ。本物のダーバビルのように」▼この一言でテスはアレックを殺し、エンジェルと逃避行に出る。捕まれば死刑、それまでの数週間を共にするのだ。女に社会への扉が閉ざされていた時代だから、テスの抵抗が精一杯だった。彼女は誰にも頼らず生きていこうとし、貧しさにかなわず男の愛人となった。仕方ないでしょ。もう生きる気力がない、テスの絶望が最後の選択をさせた。稀に見る美貌で賢く生きれば人生はもっと明るくなる、といったアレックは、エンジェルみたいな軟弱な頭脳ではなく、テスの硬質な性格をよく理解していたと思うのよ。3時間の長尺だったけど、退屈しませんでした。ナスターシャ・キンスキーは18歳でした。「悪魔の性キャサリン」は15歳。悪魔を襲名する尼僧をヌードまでケレン味なく演じ「ホテル・ニューハンプシャー」では引きこもりの「クマ女」。ジョディ・フォスターとかなり濃いラブシーンをやり、「パリ、テキサス」は家を捨て夫から去り、別れた息子に仕送りする風俗店で働く女を演じました。本作のナスターシャ・キンスキーは意志の強さを示すキリッとした眉、力のある視線。顎はがっしりと、それでいて張り出さず顔の輪郭を明確にしています。ヴィム・ヴェンダース、トニー・リチャードソン、最近では、と言っても2006年ですが、デヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」など、錚々たる監督との共作で見せた女優ぶりを、再現してほしいと願うファンは少なくないはず。