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特集「ベリッシマ(美少女)」

2019年5月17日

特集「ベリッシマ(美少女)」⑧
禁じられた遊び(1953年 社会派映画)

監督 ルネ・クレマン

出演 ブリジット・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー

シネマ365日 No.2847

悪女の遺伝子 

特集「ベリッシマ(美少女)」

 1940年6月。終戦まであと5年。フランスの片田舎。避難する市民の群れ。機銃掃射でポレット(ビリジット・フォッセー)の両親は死ぬ。5歳のポレットは死がわからない。死んだ子犬を川に捨てられ、流されるのを追ううちに牛飼いの少年、ミシェル(ジョルジュ・プージュリー)に出会う。ミシェルは見るからにおしゃれな洋服を着ているポレットの、都会的な雰囲気に惹かれる。家に連れて帰り、「親が死んじゃったんだって」。父親「だから何だ」。かくも死は日常的なのだ。一家はみな親切で「まずは養子の手続きだね」と母親は快く受け入れるつもりだ。ポレットは死んだ犬を埋め十字架を建てるが、犬が寂しがるから友だちがいるという。ミシェルはモグラ、ミミズ、ゴキブリ、ネズミ、ヒヨコなどの墓を作り、十字架を立ててやる▼粗筋は知られすぎるほどの名作ですから省きます。水車小屋の秘密の墓地づくりは二人の秘密になります。幼いポレットの可愛らしさもさることながら、この映画の誰がいちばん好きと問われたら、私はミシェルです。少年にして早や、男だわ。ひきかえポレットはすでに女のわがままを無邪気さの下にしっかり秘めている。ミシェルはポレットの言うことを叶えてやりたくて仕方ない。ポレットが「きれいな十字架だわ」といったものだから、牧師の目を盗み、教会の祭壇の十字架まで盗もうとして失敗。ポレットはミシェルの苦労を知ってか知らずか「墓地に行ったら十字架がいっぱいある」。ミシェルはさすがにビビルが、ポレットの手前「死んだ人間は怖くない」と見栄を張り、墓地荒らしにいく。本作は公開から60年以上たった今も、不朽の反戦映画として語り継がれる名作です。特にラスト「ミシェル、ミシェル」と少年の名を呼びながら、群衆の中にかき消えていくポレットの幼い、小さな後ろ姿には何度見ても涙がこみあがります▼ミシェルは、孤児であるポレットが施設に引き取られると知って「やめてくれ、ポレットを家に置いてくれたら盗んだ十字架の場所も教える、手伝いもする」と父親にすがります。でも連れて行かれる。ミシェルは悲しみに胸をかきむしられ、水車小屋の十字架をうちこわし、小屋から川に投げ捨てる。男の怒りが溢れています。彼は前夜父親に叱られ家を飛び出し、一晩何も食べていないままポレットに会いに朝帰り、朝食前の少女が「お腹が空いた」というと、ポケットからリンゴを一つだし与える。「りんご嫌い」「それしかない」「カフェオレが欲しい」「贅沢だな」。あるいはこういうシーン。ポレットが家人の一人、一人に「おやすみ」のキスをして二階の寝室に行く。ミシェルが階段の途中に座り「僕にキスは?」指で頬を指し「牧師にぶたれた」。ポレットはチュッとキスする。「もっとやさしく」。少しだけ長くチュッとやる。下で親父が「キスはもういい、二人とも早く寝ろ!」▼ラストは確かに悲劇的ですが、そうでしょうか。迎えに来た赤十字の修道女は、混雑する駅で、いち早くポレットの首に名札をかける。行く先の住所、名前は明記してあるはずだ。たとえ迷子になっても送り届けられる可能性は高い。もしポレットがミシェルの家に引き取られて、ますます少年と仲良くなりひいては嫁になると、尻にひかれるのは明らかだ。パリから来た都会のお人形みたいな美少女に、ミシェルはメロメロだし、今でさえ泥棒してまで彼女の願いを叶えてやろうとするのだ。幸福な夫婦になるであろうが、ポレットの都会回帰の芽が出たら悲劇である。別離以後、もし二人が再会するとしても、ミシェルがもう少し大人になってからのほうがいいわね。余計なお世話だけど▼ポレットの両親は実の父と母が演じています。ブリジット・フォッセーは16年後、「さらば友よ」でアラン・ドロンと共演しました。少女の頃の面影がそのまま残っていました。ジョルジュ・プージュリーは本作の後「悪魔のような女」でシモーヌ・シニョレ、「素直な悪女」でブリジット・バルドー、「死刑台のエレベーター」でジャンヌ・モロー、「悪徳の栄え」でカトリーヌ・ドヌーブ。どこまでも悪女に縁のある出演作が続いたのも、デビュー作の遺伝子のなせる技だったのでしょうか。