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特集「ベストコレクション」

2019年5月19日

特集「新緑の5月ベストコレクション」①
サバービコン 仮面を被った街(2018年 事実に基づく映画)

監督 ジョージ・クルーニー

出演 マット・デイモン/ジュリアン・ムーア

シネマ365日 No.2849

この二人どこかおかしい 

特集「新緑の5月ベストコレクション」

 時代は1959年。映画の主軸は2本。①閑静な住宅地として発展してきたサバービコンにアフリカ系アメリカ人のマイヤーズ一家が越してきた。サバービコン改善委員会は「我々は隣人を選ぶ権利がある」と主張し、排斥運動を展開。マイヤーズ家を塀で囲んで目隠しし、玄関前に密集し「出て行け」「南部へ帰れ」とがなりたてる。スーパーでは日用品を買いに来たマイヤーズ夫人デイジーに高額な値をつけ販売拒否。デイジーは冷静に対応するが住民の嫌がらせは日に日にエスカレートし、警察が出動する大騒ぎとなった。実際にあった暴動だ。②もう1本の軸はマイヤーズ家の隣家、ロッジ家の事件。ロッジ(マット・デイモン)と妻ローズ(ジュリアン・ムーア)、ローズの姉マーガレット(ジュリアン二役)と息子のニッキーが暮らす。ジャケ写の売りは「この二人どこかおかしい」だ▼ある夜ニッキーは父親に起こされた。二人の見知らぬ男がリビングにいた。「ただの泥棒だ。盗むだけだ。心配ない」とパパ。ローズは夫の運転する車が事故を起こし車椅子生活となった。夫に恨みの口吻がある。二人組は全員にクロロフォルムを嗅がせた。ニックは病院で気づく。パパとマギーおばさんは無事だったが、ママは過剰にクロロを吸い込み死んだ。マギーはニッキーの養育のため同居する。警察が容疑者の面通しを言ってきた。パパとマギーが行き数人の男の中に「犯人はいない」と告げるが、ニッキーは一人の男に見覚えがあった。マギーは髪の色を妹と同じブロンドに染めかえた。ニッキーはある日地下室からマギーの悲鳴を聞く。「やめてお願い、ダメ」降りていくとマギーの背後にパンツをずり下ろしたパパが。マギーはニッキーに気づき「天使さん」と呼びかける。ロッジは会社の財務部長だ。会社に侵入した男二人がきて「俺たちを裏切ろうってのか。ガキをなんとかしろ。やり方は任せる」と脅して帰った▼スマートな滑り出しで期待したのですが、このあたりであっけなくネタバレになります。ロッジとマギーはローズをマフィアの二人組に頼んで殺させ、保険金詐欺を狙ったわけ。しかしニッキーが顔を覚えていたので「なんとかしろ」。マギーは妹殺しに手をかすワルですが、全然そうは描かれない。仲間はずれにされている隣の少年を「野球に誘いなさい。ママとおばさんでクッキーを焼いてあげる」とやさしく扱う。警察に嘘をついたパパがショックで落ち込むニッキーに「あなたの守り神聖パトリックに祈りましょう。いつの日か愛する者と別れが訪れた時、死者が安らかに黄金のライ麦畑を渡り、悲しみが静まり、愛が絶えませんように」と語りかける。彼女はこの後やってきた保険調査員にカマをかけられ、あっさり尻尾をつかまれ、逆に脅迫される羽目になる。どうもまとまりとしてゆるいのよ。隣家の排斥運動は本筋と関係ないし、調査員がガラリ態度を変えて「目をつぶってやるから降りた保険金全額よこせ。それで刑務所入りが免れるなら安いものだろ」と急変するのは冗談みたいに安易だ▼ロッジを困らせる男たちは殺すか殺されるかしてスクリーンから退場。マギーは自分とロッジの犯罪を知るニッキーを毒薬入りサンドイッチで殺そうとする。知的でやさしく隣家の少年の味方だったマギーが我が甥を殺す殺人鬼モードに一変。そのギャップにうろたえる。みな死んだ。ロッジは息子に「保険金でカリブの島に行ってやり直そう。それともお前も殺されたことになりたいか」と息子殺しまでほのめかすのだ。ただし彼は喋りながらマギーの作ったサンドイッチをパクパク食べている…。ラスト。テーブルにうつ伏せに倒れているロッジ。ニッキーは庭に出て隣家の少年に声をかけ、二人はキャッチボールを始める。サバービコンの街全景を鳥瞰してエンド。少年たちのキャッチボールは、人種差別は将来融合されていくでしょうとする暗示か。父親と叔母が不倫して邪魔になった母親を殺し、叔父も巻き添えを食って殺され、父は自分まで殺そうとした、そんな目にあった少年が容易に立ち直るとは思えない。ジュリアンは妹殺しを共謀する残酷でいやらしい女にとても見えず残念。マット・デイモンは中年太りのコロコロの体型で煮え切らない主犯を演じたが、ワルの迫力なし。いくら盟友ジョージ・クルーニーの監督でも引き受けたのは間違い。主演二人がビッチとワルのキャラから外れているから、それこそ「この二人どこかおかしい」。